自身の作家活動の原点とも言える写真技法を和歌の伝統技法である「本歌取り」と比較し、「本歌取り論」を展開する杉本博司。2022年には本歌取りをテーマにした展覧会「杉本博司 本歌取り―日本文化の伝承と飛翔」を姫路市立美術館で開催し、大きな注目を集めた。これを新たに展開させた展覧会「杉本博司 本歌取り 東下り」が、渋谷区立松濤美術館で開催される。会期は9月16日〜11月12日。
そもそも本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌をつくる手法のことを指す。作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌取りの決まりごとのなかで本歌と比肩する、あるいはそれを超える歌をつくることが求めらるというものだ。
本展では、東国への旅中に旅人が目にする雄大な富士山を描いた葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》を本歌とした新作《富士山図屏風》が初公開。本展のために制作された新作であり、北斎の赤富士が描かれたと推測される、山梨県三つ峠からの富士山の姿をとらえている。
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また、書における臨書をもとに、写真暗室内で印画紙の上に現像液または定着液に浸した筆で書いた新作「Brush Impression」シリーズにも注目だ。
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加えて、中国南宋〜元時代の画家・牧谿の水墨画技法を本歌とした《カリフォルニア・コンドル》など、杉本の本歌取りの代表的作品も併せて展示。さらに、室町時代に描かれたと考えられる《法師物語絵巻》より、第7場面「死に薬」を狂言「附子」の本歌ととらえ、その他の8つの物語と共に一挙公開する(会期中の11月9日には杉本狂言 本歌取り 『法師物語絵巻 死に薬~「附子」より』 『茸』が渋谷区文化総合センターで開催。出演は野村万作、野村裕基ほか )。
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なお、渋谷区立松濤美術館の建築を手がけた白井晟一(1905〜1983)による杉本所蔵の書《瀉嘆》が展示されるほか、今後、小田原文化財団 江之浦測候所がある「甘橘山」(かんきつざん)に移築される白井が晩年に設計した邸宅「桂花の舎」の模型なども見ることができるという。
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