2023.3.17

ヘザウィックの建築展から重要文化財の秘密、江口寿史のイラストレーションまで。今週末に見たい展覧会ベスト10

今週開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」展示風景より
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世界が注目するデザイン集団。企画展「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」

展示風景より

 ニューヨーク、シンガポール、上海、香港など、世界各地で革新的なプロジェクトを手がけるデザイン集団、ヘザウィック・スタジオ。その主要プロジェクト28件を日本で初めて展示する企画展「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」が六本木ヒルズ森タワーの東京シティビューでスタートした。会期は6月4日まで。

 本展は、試行錯誤を重ねながらアイデアを実現する同スタジオの仕事を「ひとつになる」「みんなとつながる」「彫刻的空間を体感する」「都市空間で自然を感じる」「記憶を未来へつなげる」「遊ぶ、使う」の6つの視点で構成。人々の心を動かす優しさ、美しさ、知的興奮、そして共感をもたらす建築とは何かを考えるきっかけとなるだろう。

会期:2023年3月17日〜6月4日
会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
住所:東京都港区六本木6-10-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜22:00 ※入館は21:00まで
休館日:会期中無休
料金:[当日] 一般 2000円(2200円) / 高校・大学生 1400円(1500円) / 4歳〜中学生 800円(900円) / 65歳以上 1700円(1900円) ※()内は土日祝価格

史上初、重要文化財のみを展示。東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」

展示風景より

 東京国立近代美術館の開館70周年を記念する展示「重要文化財の秘密」が、3月17日より開催中だ。同展は、史上初となる明治以降の絵画・彫刻・工芸68点のうち重要文化財指定作品51点のみで構成されるまたとない展示となっている。

 展示作品には、横山大観《生々流転》、萬鉄五郎《裸体美人》、新たに重要文化財に指定されることになった鏑木清方の三部作《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》などの同館所蔵作品に加え、同館寄託の原田直次郎《騎龍観音》も含まれる。さらに、青木繁《わだつみいろこの宮》、岸田劉生《麗子微笑》、黒田清輝《湖畔》、高橋由一《鮭》、高村光雲《老猿》などの有名作品も並ぶ。

会期:2023年3月17日~5月14日
会場:東京国立近代美術館1F 企画展ギャラリー
住所: 東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:00(金土〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし、3月27日、5月1日、8日は開館
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 700円

東京で見る江口寿史の「いま」。個展「東京彼女」

展示風景より

 東京ミッドタウン日比谷では、マンガ家・イラストレーターの江口寿史の個展「東京彼女」が注目されている。会期は4月23日まで。

 本展は東京ミッドタウン日比谷での展示のために新たに描き下された、日比谷の街にたたずむ「彼女」の新作が披露されるほか、江口が80~90年代に愛用した画材「パントーン・オーバーレイ」による初公開の原画作品も多数展示されている。レポートはこちら

会期:2023年3月14日~4月23日
会場:東京ミッドタウン日比谷 6階 BASE Q HALL
住所:東京都千代田区有楽町1-1-2
開館時間:11:00~19:00
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料 ※すべて当日券、事前販売はなし

人間は自然をどうとらえてきたのか。「自然という書物―15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」

アレクサンダー・フォン・フンボルト 新大陸赤道地方紀行 1805〜34年刊 銅版・手彩色 放送大学附属図書館

 15世紀から19世紀までの西洋のナチュラルヒストリー(自然誌/博物学)とアート(美術/技芸)のつながりに注目し、人間が表してきた自然のすがた・かたちを紹介する展覧会「自然という書物―15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」が東京の町田市立国際版画美術館で3月18日に開幕する。

 本展では、人間が古くからどのように自然物や自然環境(動物や植物、微小な生物、地球上の地勢や地質など)を記述・描写してきたのかという歴史を振り返るとともに、それら自然物のすがた・かたちを展覧。そこから人がどのようなイメージを膨らませ創作活動を行ってきたかという事例も交えて、人と自然の歴史を書物を通じて読み解いていくというもの。また、その普及に多大なる貢献をしてきた活字と版画などの印刷技術にも焦点が当てられる。

会期:[前期] 2023年3月18日〜4月16日 / [後期] 4月18日〜5月21日 ※展示替えあり
会場:町田市立国際版画美術館
住所:東京都町田市原町田4-28-1
電話番号:042-726-2771 
開館時間:10:00〜17:00(土日祝〜17:30)※入場は閉館30分前まで
休館日:月
料金:一般 900円 / 大学・高校生 450円 / 中学生以下は無料

「平面」を超えて立ち現れるそのストーリーとは。「VOCA展2023」

永沢碧衣 山衣(やまごろも)をほどく 2022 撮影=手塚棗

 平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に、1994年より毎年開催されている美術展「VOCA展」。その30回目となる展覧会が、東京の上野の森美術館で開幕した。会期は3月30日まで。

 2023年は、大賞となる「VOCA賞」が永沢碧衣に決定。次いで「VOCA奨励賞」にはエレナ・トゥタッチコワと七搦綾乃が、「VOCA佳作賞」には黒山真央と田中藍衣が選出された。七搦は大原美術館が同館独自の選考を経て決定する「大原美術館賞」も受賞となった。永沢碧衣インタビューはこちら。展覧会レポートはこちら

会期:2023年3月16日〜30日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:03-3833-4191
開館時間:10:00〜17:00 ※入場は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 800円 / 大学生 400円 / 高校生以下無料 ※障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料(要証明)

山種美術館で堪能する、巨匠たちの富士と桜。「特別展 世界遺産登録10周年記念 富士と桜 ―北斎の富士から土牛の桜まで―」

展示風景より、左から菱田春草《桜下美人図》(1894)、上村松園《桜可里》(1926-29頃)、松岡映丘《春光春衣》(1917)

 日本を誇る巨峰「富士山」。2013年のユネスコの世界文化遺産への登録から10年を記念し、特別展「富士と桜 ─北斎の富士から土牛の桜まで─」が東京・広尾の山種美術館で開催されている。会期は5月14日まで。

 日本において富士と桜が盛んに描かれるようになったのは近代以降。日本画家たちが「日本的なモチーフ」として求めたなかで、日本のシンボルである「富士と桜」が重要な位置を占めるようになっていった。本展では、こうした日本画における「定番中の定番」の富士と桜を描いた約50点が展示。「富士山を描く」「桜を描く」の2章構成で紹介されている。レポートはこちら

会期:2023年3月11日〜5月14日(前期:3月11日〜4月16日、後期:4月18日〜5月14日)
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで 
休館日:月(ただし5月1日は開館) 
料金:一般 1300円 / 中学生以下無料 ※「春の学割」として、大学生・高校生は本展に限り特別に入館料が通常1000円のところ500円

奈良美智の展覧会が街と人に与えたものとは。「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」

展示風景より

 青森県弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫(現・弘前れんが倉庫美術館)では、2000年代に3度にわたって奈良美智の展覧会が行われた。その展覧会を起点に、奈良の思想や出身地への思いを振り返る「『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展」が、同館で3月21日まで開催されている。

 同展は横浜美術館を皮切りに全国に巡回し、最後は奈良の出身地である青森県弘前市の弘前れんが倉庫美術館での開催となった。本展は「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」(2002)、「From the Depth of My Drawer」(2005)、「YOSHITOMO NARA+graf A to Z」(2006)の3つの展覧会に光を当てている。レポートはこちら

会期:2022年9月17日〜2023年3月21日
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:青森県弘前市吉野町2-1
電話番号:0172-32-8950
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:一般 1300円 / 大学・専門学校生 1000円 / 高校生以下無料

TARO賞受賞作家が岡本敏子を通して岡本太郎を見る。「弓指寛治 “饗宴”」

弓指寛治 眠る太郎

 弓指寛治の企画展「弓指寛治 “饗宴”」が、東京・南青山の岡本太郎記念館で3月21日まで開催されている。弓指にとって同館初の企画展となる本展は、岡本太郎の芸術を次世代に残すために尽力した岡本敏子に焦点を当てたものだ。

 今回の展示に際して弓指は、「多くの芸術家が忘れられその作品も眠り続けるなか岡本太郎は例外である」という気づきから、芸術家・岡本太郎を次世代に伝えた岡本敏子の生を通して「芸術や芸術家を後世に残すこと」を探る。

会期:2022年11月23日~2023年3月21日
会場:岡本太郎記念館
住所:東京都港区南青山6-1-19
開館時間:10:00~18:00  ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:火(祝日の場合は開館)
料金:一般 650円 / 小学生 330円 

無意識下における理論、その先とは。やんツー「機械の無意識、演算の外側」

Untitled Drawing by a Device for ”Graffiti” #8 (pulled/broken) 2022 撮影:vvpfoto

 東京・恵比寿のNADiff a/p/a/r/tで、美術家・やんツーの個展「機械の無意識、演算の外側」が3月19日まで開催中だ。

 本展は、やんツー初の作品集『yang02 works 2009-2022』(rin art association)の刊行にあわせて開催されるもの。会場では、やんツーの代表作であるドローイングマシンによって描かれた作品が、機械や外的要因に委ねながら壊され、剝がされ、別のドローイングで覆われるなどの手法を経て展示される。機械と人間の無意識下における理論を起点に制作作業が繰り返され、その先に問いを見いだそうと試みる空間となっている。

会期:2023年2月23日〜3月19日
会場:NADiff a/p/a/r/t
住所:東京都渋谷区恵比寿1-18-4
電話番号:03-3446-4977
開館時間:13:00〜19:00
休館日:月〜水
料金:無料

ガーディアン・ガーデンの空間をフル活用。光岡幸一展「ぶっちぎりのゼッテー120%」

展示風景より

 東京・銀座のガーディアン・ガーデンで、「The Second Stage at GG」 シリーズの53回目となる光岡幸一展 「ぶっちぎりのゼッテー120%」が開催中。3月18日まで光岡本人に会いに行くことができる。

 本展タイトル「ぶっちぎりのゼッテー120%」は、光岡がアルバイト先で倉庫整理中に見つけたメモ帳に書かれていた一節を引用したものだ。偶然出会う物事や人々との関わりを積極的に作品のなかに取り込んできた光岡。タイトルにも、その制作姿勢が滲んでいる。本展では、ガーディアン・ガーデンの場所をキーワードに新作インスタレーションを展開。開館から22年ものあいだ、銀座の地下にあり続けたという事実を踏まえ、23年8月に閉館するガーディアン・ガーデンの空間でしかなしえない光景が生み出されている。

会期:2023年2月7日〜3月18日
会場:ガーディアン・ガーデン
住所:東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F
開館時間:11:00~19:00
休館日:日祝
料金:無料