甲斐荘楠音の回顧展から京都のウォーホル展まで。今週末に見たい展覧会ベスト8

今週開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」展示風景より、右が《最後の晩餐》(1986)

木米とは何者か?「没後190年 木米」(サントリー美術館)

展示風景より、木米《白泥蘭亭曲水四十三賢図一文字炉》(19世紀)

 江戸時代後期の京都を代表する陶工にして画家である文人・木米(もくべい、1767~1833)の生涯を追う展覧会「没後190年 木米」がサントリー美術館で始まっている。

 木米は30代で中国の陶磁専門書『陶説』に出会い、これを翻刻しつつ本格的に陶業に邁進。50代後半からは、清らかで自由奔放な作風が魅力の絵画作品を精力的に制作した。本展では、当時の文人たちが憧れた木米の個性あふれる屈指の名品を一堂に紹介。木米の陶磁、絵画、交友を通じて、その生涯と木米芸術の全貌に触れられる貴重な機会だ。

会期:2023年2月8日~3月26日
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア 3階
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:火(3月21日〜18:00)
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料

異色の日本画家。「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」(京都国立近代美術館)

甲斐荘楠音 幻覚(踊る女) 1920(大正9)頃 絹本着色 183.5×105.0cm 京都国立近代美術館

 醜さも含めた人間の生々しさを描いた異色の日本画家・甲斐荘楠音(かいのしょう・ただおと、1894~1978)。美術館で二度目となる回顧展「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」が、京都国立近代美術館で2月11日に開幕する。

 甲斐荘楠音は戦前の日本画壇で高い評価を受けた日本画家。1940年代初頭に映画業界に転身して以降その成果が顧みられることはなかったが、没後の97年に開催された初の回顧展で日本画家としての活動の全貌が明らかになった。本展では、日本画家の枠に収まりきらない甲斐荘の「越境性」に焦点が当てるとともに、「女性」に扮し演じた甲斐荘本人の写真など、様々な資料も展示される。

会期:2023年2月11日〜4月9日
会場:京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺26-1
電話番号:075-761-4111
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00) ※入館は閉館30分前まで  
休館日:月
料金:一般 1800円 / 大学生 1100円 / 高校生 600円 / 中学生以下無料

「iichiko design」の源泉に迫る。「イメージの力 河北秀也のiichiko design」(大分県立美術館)

B倍ポスター 2004

 三和酒類株式会社が販売するロングセラー商品「いいちこ」のポスターや広告、CMなど、そのブランドイメージを手がけ、いいちこを全国的に有名な商品へと押し上げたアートディレクター・河北秀也。その展覧会「イメージの力 河北秀也のiichiko design」が、大分県立美術館で2月11日にスタートする。

 本展は、一貫した世界観でデザインの本質を提示してきたiichiko designの全貌を紹介するとともに、河北秀也のデザイン思考についても掘り下げるもの。いいちこ誕生の地、大分県で開催されるまたとない展覧会にぜひ注目したい。

会期:2023年2月11日~3月29日
会場:大分県立美術館 1階 展示室A
住所:大分県大分市寿町2-1
電話番号:097-533-4500
開館時間:10:00~19:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:なし
料金:一般 800円 / 大学・高校生 500円

“包まれた凱旋門”を振り返る。「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」(21_21 DESIGN SIGHT)

展示風景より

 2021年9月にパリのエトワール凱旋門を2万5000平米におよぶ青い布と3000メートルもの赤いロープで包んだクリストとジャンヌ=クロードのプロジェクト「LʼArc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961–2021(包まれた凱旋門)」。その制作背景と実現に向けた長い道のりに焦点を当てる企画展「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」が、2月12日に閉幕する。

 「包まれた凱旋門」プロジェクトは、歴史的な建造物などを布で覆い隠す大規模なアートプロジェクトで知られる故クリスト(ブルガリア出身、1935~2020)とジャンヌ=クロード(モロッコ出身、1935~2009)が1961年に構想し、60年の年月を経てついに実現したもの。本展では、クリストとジャンヌ=クロードのパリでの出会いに始まり、「包まれた凱旋門」プロジェクトの構想から準備、設置、実現までの段階に沿って展開されている。レポートはこちらから。

会期:2022年6月13日〜2023年2月12日
会場:21_21 DESIGN SIGHT
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
電話番号:03-3475-2121
開館時間:10:00〜19:00 ※入場は18:30まで
休館日:火
料金:一般 1200円 / 大学生 800円 / 高校生 500円 / 中学生以下無料 ※ギャラリー3は入場無料

「A girl philosophy -ある少女の哲学」安珠 写真展

展示風景より ©CHANEL

 モデルとして活躍後、写真家に転身した安珠。その個展が東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで2月12日まで開催されている。

 安珠は学生のときにモデルとしてスカウトされ渡仏し、パリコレをはじめ様々なショーで活躍。帰国後の1990年に『サーカスの少年』を出版するとともに写真家に転身し、少年少女をテーマにした作品を発表し続けている。シャネル・ネクサス・ホールで初の個展となる本展では、撮りおろされた最新作約50点と映像、過去の作品を交えて展示を構成。『不思議の国のアリス』や『青い鳥』 などの児童文学の世界がモチーフとなり、ある少女が目にし、心に留めた出来事に内省を深めていく過程が表現されている。レポートはこちらから。

会期:2023年1月18日〜2月12日
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階
開館時間:11:00〜19:00  ※入場は18:30まで 
休館日:会期中無休 
料金:無料(混雑時には入場制限あり)

小林正人・鬼頭健吾 展

展示風景より

 京都のMtK Contemporary Artで開催中の小林正人と鬼頭健吾による2人展が、2月12日で閉幕する。

 画家の小林正人は、キャンバスの布地を木枠に張りながら同時に手にのせた絵具で描く手法により、絵画空間と現実空間を肉体を通し交信させ、絶えず現実世界と交流する存在としての「絵画」を出現させてきた。いっぽう鬼頭健吾は、カラフルでポップな既製品を使ったインスタレーション作品などで知られている。

 本展で小林は、筆を咥えた馬の肖像画「画家の肖像(ペア)/ Portrait of the Artist(Pair)」と星空を想起させる「Unnamed 77」からなる、新作のペア作品2点を公開。これまで、ペアでありながら作家の意思により同じ空間で発表されることがなかった小林の作品だが、今回はペア作品を同一空間に初展示する。小林と鬼頭の対談記事はこちらから。

会期:2022年12月10日~2023年2月12日
会場:MtK Contemporary Art
住所:京都府京都市左京区岡崎南御所町20-1
電話番号:075-754-8677 
開館時間:10:00~18:00 ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認 
休館日:月 
料金:無料

100点以上が初公開。「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」(京都市京セラ美術館)

「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」展示風景より

 ウォーホルが1956年の世界旅行中に初めて来日した際に訪れた京都。ここで開催中の大回顧展「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」展が、2月12日で閉幕する。

 本展は、京都とウォーホルの関係に目を向け、そのゆかりを示す貴重なスケッチなどを展示し、若き日のアンディ・ウォーホルの心をとらえた京都の姿に思いを馳せるというもの。作品はすべてアメリカ・ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品のみで構成されており、絵画・彫刻など約200点および映像15点が展示。門外不出の《三つのマリリン》を含む100点以上が日本初公開という貴重な機会だ。レポートはこちらから。

会期:2022年9月17日~2023年2月12日
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし祝日の場合は開館)
料金(当日券):土日祝一般 2200円 / 平日一般 2000円 / 大学・高校生 1400円 / 中学・小学生 800円

西日本初の大回顧展。「李禹煥」(兵庫県立美術館)

東京展の展示風景より、《関係項―棲処(B)》(2017)

 兵庫県立美術館では、李禹煥(リ・ウファン)の西日本では初となる大回顧展「兵庫県立美術館開館20周年記念 李禹煥」が2月12日まで開催されている。本展は東京展(国立新美術館)からの巡回展。

 李は1936年生まれ、韓国慶尚南道出身。ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日、その後、日本大学文学部で哲学を学んだ。東洋と西洋の様々な思想や文学を貪欲に吸収し、1960年代から現代美術に関心を深めると、60年代後半に入って本格的に制作を開始。視覚の不確かさを乗り越えようとした李は、自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示する「もの派」の動向を牽引することとなる。本展は、「もの派」に至る前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた「関係項」シリーズ、そして、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、李の代表作が一堂に会する貴重な機会だ。

会期:2022年12月13日~2023年2月12日
会場:兵庫県立美術館
住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
開館時間10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月
料金:一般 1600円 / 大学生 1200円 / 70歳以上 800円 / 高校生以下無料

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