1978年の開館以来、ジャン=フランソワ・ミレーの《種をまく人》を中心に、ミレーやバルビゾン派の作家、ヨーロッパの主要な風景画家、ならびに山梨ゆかりの作家や日本の近現代作家の作品収集に注力してきた山梨県立美術館が、新たなフェーズに入ろうとしている。
同館は、2028年度に開館50周年を迎えるのを前に「新たな価値を生み出す美術館」ビジョン骨子(案)を発表。策定中のこのビジョンにおいて、注目を集めるのが、メタバースを活用したプロジェクトだ。
このプロジェクトでは、地元山梨県出身のアーティスト・たかくらかずきが参加。2023年2月末に、美術図書室を改装した体験コーナーを整備し、たかくらかずきの新制作作品展示、作家と協働した教育普及イベントを実施するなど、本格稼働を予定している。
たかくらは1987年生まれ。東京造形大学大学院修士課程修了。3DCGやピクセルアニメーション、3Dプリント、VR、NFT などのテクノロジーを用いて、東洋思想、とくに近年は日本仏教をテーマに作品を制作。現代美術とデジタルデータの新たな価値追求をテーマとしている。
2月の本格稼働を前に、11月30日からはプレオープンとして、たかくらの過去作を展示する「大BUDDA VERSE」展を仮想空間で一般公開。仏像や妖怪を作品として現代に蘇らせる「NFT BUDDHA」と「YOKAIDO」の2シリーズで構成される。また展示空間もたかくらによるもので、自然豊かな山梨県を想起させる山々に囲まれた湖の上に、西洋のミュージアムと日本の寺院を混交させた建築物が立ち現われるという。
県立美術館が取り組む意欲的なこのプロジェクト。その展開に注目したい。