19世紀末を経て芸術の爛熟期を迎えたウィーン。そこに生き、28 年という短い生涯を駆け抜けた夭折の画家エゴン・シーレ(1890〜1918)。日本でもいまなお高い人気を誇るこの画家の、東京では30年ぶりとなる大規模回顧展が東京都美術館で開催される。会期は2023年1月26日~4月9日。
ウィーンにほど近いトゥルンに生まれたシーレは15歳のとき、最大の理解者であった父を精神病で失い、その喪失感を埋めるように、また自己肯定のために多くの絵を描き、最初の自画像集をまとめた。1906年には弱冠16歳でウィーンの美術アカデミーに入学したが、保守的な教育に満足せず退学。若い仲間たちと「新芸術家集団」を立ち上げた。
大胆なボーズを取る裸体を視覚を惑わす歪な線で描き、無防備でありながら緊張感をはらむ表現主義的な画風を確立したシーレ。ヌード・モデルをめぐってはたびたび誘拐やわいせつ罪で告訴され、12年に不道徳な作品を広めたとして、およそ1ヶ月拘留されるなど、波乱に満ちた人生を送った。
本展は、エゴン・シーレ作品の世界有数のコレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シ
ーレの油彩画、ドローイング40 点以上を通して、画家の生涯と作品を振り返るもの。加えて、シーレに大きな影響を与えたグスタフ・クリムトをはじめとする同時代作家たちの作品もあわせた約120点展示。シーレを含むウィーン世紀末美術を展観するものとなる。