1989年のバブル絶頂期に「世界の数寄屋」をつくるプロジェクトとして建設された「ホテル川久」。総工費400億、延床面積2万6000平米、建設期間2年という大規模なこのホテルは1993年に優れた建築作品と設計者に贈られる「村野藤吾賞」を受賞。2020年には金箔表面積でギネス世界記録™に認定された。このホテルが、歴史価値の保存と伝承を目的として昨年オープンさせたのが川久ミュージアムだ。
川久ミュージアムでは、世界中の匠の技術を結集させた「夢の城」である川久の本来のテーマ「作り手の力を最大限発揮する場所」として、今年からアーティストインレジデンス事業を新設。対象は音楽、美術分野、建築をはじめとして、文学、デザイン、現代アートなど様々な分野のアーティストに開かれていることが特徴だ。審査員・キュレーターは、板橋令子、黒沢聖覇、陳暁夏代、服部浩之、原久子、宮本初音が務めた。
滞在中に制作された作品は、川久ミュージアムにて発表やライブパフォーマンスの場を「企画展」として実施。この企画展の第1弾となるのが、6月1日に始まる「KAWAKYU ART Exhibition 2022」だ。
本展では、多数の応募のなかから選ばれた22年度の第1回レジデンス対象アーティスト、稲垣智子、井上修志、植田陽貴、梅原徹、長嶺慶治郎、宮本華子の6名が滞在制作を実施。これに加え、キュレーター推薦アーティストとして市川大翔、しまうちみか、林菜穂、松元悠の4名が展覧会に参加する。
川久が持つその場の力とアーティストの創作がどのような化学反応を見せるのか。注目の展覧会となる。
なお、和歌山県紀南地方を中心に活動するアートイベント「紀南アートウィーク」の特別展「みかんコレクティヴ」も同時開催。AWAYA(福島正和・奥野裕美子)/ VR蕎麦屋タナベによるVR作品とサウンドアートの展示も行われる。