展覧会では「作品にお手を触れないようお願いします」という注意書きをよく目にする。こうした「普通」に対して「さわってみたいと思うことはありませんか?」と問いかける展覧会「これってさわれるのかなー彫刻に触れる展覧会ー」が、6月11日から神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開催される。
本展では、《考える人》でお馴染みの彫刻家、オーギュスト・ロダンの《花子のマスク》、箱根彫刻の森美術館常設展時作品《両腕》を制作したケネス・アーミテージの《訪問者たち》 のほか、柳原義達、流政之、浜田知明、湯原和夫ら日本の現代彫刻を牽引してきた作家の作品など、同館が所蔵する彫刻作品24点が展示される。2階ギャラリーではさらに、「素手で触れる」かたちで彫刻家・北川太郎の作品の特別出品も予定されている。
展示作品そのものも魅力的であるが、本展は何より「さわれる」展覧会である。作品が持つ造形の趣を目で見るだけではなく、手を通して感じることができるのだ。ただし、作品保護と感染症対策のため、来館者は展示室入り口にて手袋を着用することになっている。用意される手袋は学芸員や美術品輸送の専門業者が作品に触れるときと同じニトリル手袋というのが、「さわれる」展覧会のこだわりだ。
作品に触れて質感や温度の違いを感じることは、彫刻が金属、木、陶、石など、素材の多様性をゆるす芸術だと再認識するきっかけにもなるだろう。一例として浜田知明《首を!》 はブロンズ製、土方久功《ゆうべのアンニューイ》は木製 、山本正道《雲の形》は石灰石を彫っており、辻晉堂《迷盲》は テラコッタが素材となっている。どのような差があるのか、展示を訪れ、触れて確かめほしい。
目で見るだけではない、手で触れることを許された本展では「普通」とは異なる、新鮮な鑑賞体験がもたらされるだろう。