クーデターで犠牲となった100人の顔を「マスク」に。ミャンマー人アーティストの展覧会が東京藝大で開催へ

2021年2月にミャンマーで起きたクーデターで犠牲になった人々の顔をかたどり、ミャンマー出身のアーティスト・カミズが制作した100点のマスク。これを初公開する展覧会「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」が、東京藝術大学大学美術館 陳列館で開催される。会期は5月1日〜10日。

カミズの作品イメージ

 2021年2月、ミャンマーで国軍によるクーデターが勃発した。この軍による弾圧によっていのちを失ったミャンマー市民を記録するための展覧会が、東京藝術大学大学美術館 陳列館で開催される「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」だ。会期は5月1日〜10日。

 本展では、ミャンマー出身のアーティスト・カミズがクーデター以降に制作してきた、犠牲になった人々の顔をかたどった紙製の「マスク」100点によるインスタレーション作品を初公開。加えて、クーデター勃発からミャンマーで行われてきた文化的な実践の事例を、テキスト、画像、写真、絵画など様々なメディアを通して紹介する。

カミズの作品イメージ
カミズの作品イメージ

 20年以上にわたってビジュアルアートの分野で活動しているカミズ。クーデター勃発後は、安全のためにマスクでその身を護りながら匿名で活動を続ける。匿名性を保ち、ウイルスの脅威からも身を護るマスクは、生の象徴とも言える。また、市民の顔を模した「マスク」を制作することで、失われた命の証を刻み鎮魂を祈ると同時に、それらを剥がすこと、つまり死の真実を明らかにすることを象徴している。

カミズの作品イメージ
カミズの作品イメージ

 カミズは、本展は「一作家の展覧会ではない。この展示には複数の本質がある」としつつ、次のような言葉を寄せている。「軍事政権/国軍の恐怖と抑圧からの自由を求めて闘い、英雄として命を落としたすべてのミャンマー市民に敬意を表し、名誉を授ける場。鑑賞者が自身にとっての『死』について内省し、思いを馳せる場。そして私たち人間が連帯のエネルギーを感じ、生と死の認識を交える場なのだ」。

 また、本展のキュレーションを手がけた、アジアのアートや文化的実践を研究する居原田遥は、ステートメントで次のようなメッセージを寄せている。

ここから遠く離れた地であるミャンマーで起きたクーデターで覚えたのは、途方もない絶望だった。当たり前の自由と未来を求める人々に対し、非道かつ不当な暴力が止まらない。声をあげるだけで命の危険にさらされ、ときにはすべてを奪われ、恐怖を抱えながら耐え凌ぎ生きる人々がいる。諦めることなく、抵抗を示す声。あるいは、沈黙を続けながらも可能な手段で届く意思。拡散を求め広がり続ける情報。絶え間なく生じる「絶望」を受け止め、またそれらを超え、そして理不尽な社会に抗うため、アートをはじめとする表現ができる/すべきこと、あるいはこの「絶望」を目にする人々にできることは、希望のための文化的連鎖を絶やさず、つなぎ続けることである。

 「死」を見つめ行動を起こそうとするカミズ。その作品を通し、いのちや民主化運動を考え、芸術による連帯がもたらす未来の可能性に目を向けてほしい。

本展メインビジュアル デザイン=中本那由子

編集部

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