ヴィジュアル・アートのパイオニアとして知られるブライアン・イーノの展覧会「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」が、京都中央信用金庫 旧厚生センターで開催される。会期は6月3日〜8月21日。
ブライアン・イーノは、音と光の双方が絶えず常に変化しシンクロしあう空間芸術「ジェネレーティヴ・アート」をつくりあげ、ヴィジュアル・アート界に革命をもたらしたイギリス出身のアーティスト。デヴィッド・ボウイ、U2、コールドプレイの作品を手掛け大ヒットを生んだ音楽プロデューサーという顔を持ち、世界でもっともも耳にされたサウンドのひとつWindows 95の起動音の制作者でもある。
彼はまたアンビエント・ミュージックの創始者としても知られている。音楽は一般に集中して聞かれることを望むが、イーノは聞くことを強制しないことに音楽の価値を見出した。そして、傾聴も無視もあらゆる聞き方を受容し、途絶えることなく変化し、雨や風のようにその環境の一部となる音楽を目指したのである。
そうしたイーノの芸術が、空間を創出するインスタレーション・アートに向かったのは必然と言えるかもしれない。
本展における鑑賞体験も、いつきたか、部屋のどこに居たかによって変化するものだ。その時その場所だけの体験をもたらすと同時に、観客のあらゆる接し方を受容する展示会場は、イーノの代表作《77 Million Paintings》と《The Ship》を中心に構成される。
《77 Million Paintings》は絶えず変化する音と光がシンクロすることで生まれる空間芸術作品。タイトルの「77 Million」はシステムが自動生成することのできるヴィジュアルの組み合わせ数を意味している。2006年にラフォーレミュージアム原宿において世界初公開されて以降、アップデートを重ねながら世界各地を巡回すること47回。ヴィジュアル・アート界を代表する作品となった同作が今年、16年ぶりに帰還する。
《The Ship》は、多数の個性的なスピーカーから異なる音が鳴ることで、鑑賞者の居る場所によって違う音が聴こえるオーディオ・インスタレーション作品。部屋の中を移動することで、個別のスピーカーから出る音を鑑賞者が自発的にミックスすることもできる。スピーカーが視覚的特徴となるよう、空間を演出する照明も見どころとなる。
部屋の中を移動することで、個別のスピーカーから出る音を鑑賞者が自発的にミックスすることもできる。スピーカーが視覚的特徴となるよう、空間を演出する照明も見どころだ。
イーノがコロナ禍において大規模なインスタレーションを展示するのは、今回が初。創作活動に加え、慈善団体「EarthPercent」を設立するなど環境問題にも精力的な取り組んできたイーノが、世界的文化都市の京都で発するメッセージに世界中から注目が集まる。