「いま・ここ」とは異なる時間軸へ。東急プラザ渋谷に水江未来、平野薫、水上愛美の作品が出現

渋谷と成田・羽田両空港を結ぶバスターミナルに隣接する東急プラザ渋谷。都市を象徴するこの施設で、時々の人々と社会状況を表す現代アートを展示する試みが始まった。初回はアニメーション作家の水江未来、インスタレーション作家の平野薫、画家の水上愛美の3名が参加。展示期間は7月22日まで。

メインビジュアル デザイン=Hiei

 渋谷と成田・羽田両空港を結ぶバスターミナルに隣接する東急プラザ渋谷。都市を象徴するこの施設で、時々の人々と社会状況を表す現代アートを展示する試みが始まった。初回は、国際的に活躍するアニメーション作家・水江未来、衣服や布地を糸の一本一本まで解き、再構成する繊細なインスタレーションを手がける平野薫、そして近年、世界最古の砂漠の砂や貝の粉を素材に混ぜるなどより独自性を高める画家の水上愛美が参加。都市を生きる人々の身体感覚に呼びかけ、深い洞察へ誘う作品をピックアップしている。展示期間は7月22日まで。

 3階で上映されるのは、水江による「MODERN」シリーズ。2018年から21年までの同シリーズを、今回のための再構成した《TOKYO BLOCKS》を見ることができる。都市を彷彿とさせる幾何学的なイメージが高速で変動するその作品からは、日々変化する東京に置き去りにされていく人間の身体やその戸惑い、資本主義へのアンチテーゼが浮かび上がる。

水江未来 TOKYO BLOCKS 2018-2021
平野薫 Untitled-rain DDR- 2014 Installation view : tim| State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold

 6階の窓辺には、平野の代表作のひとつでもある《Untitled -rain DDR-》(2014)を展開。本企画では、18年に開催されたポーラ美術館での個展「記憶と歴史」でも話題を集めた「rain」シリーズより、作家に所縁のある旧東ドイツ製の傘を解いたインスタレーションが展示されている。平野の作風は、いずれも糸の状態に戻すことで、撚れや色褪せを一層顕在化させ、それを身に付けていた人の気配や身体性、そして個人の記憶を強く感じさせるもの。本企画でも、歴史や社会という公的な時間と、個人の記憶という私的な時間をシームレスに考える重要性と大らかさを放っている。

 続く7階では、画家・水上愛美の18年から21年までの絵画作品が並ぶ。水上は、3.11東日本大震災を機に「災害と災害のあいだの時間を生きている」という意識を強め、その表象として、18年まで危険色であり退色の速い蛍光色を用いて絵を描いていた。その後より大きなスケールで世界を見つめ、18年以降今日まで、世界最古の砂漠の砂や貝の粉を素材に混ぜるなど独自性を高めながら、現代人が生きる「いま・ここ」とは異なる時間軸を絵画を通じてとらえようとしている。ひとりの画家の感覚の変遷をたどる空間だ。

 言葉ではとらえづらい現代人の身体や心の機微、そして社会そのものの揺らぎへの気づきを促す作品は集まる「dawn」。企画の背景には、都市の時間が苦しくなったひとや、それに気付けないほど日々に追われているひとが、偶然でもそこにたどり着いて深呼吸してほしいという意図があるという。

水上愛美 近作 Photo by Nirei Hiroshi

編集部

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