NEWS / EXHIBITION - 2018.5.21

平野薫の個展がポーラ美術館で開催。傘を解体、再構成する繊細なインスタレーションを展開

古着などを糸の一本一本にまで解き、再構成する繊細なインスタレーションを手がける平野薫の個展「平野薫―記憶と歴史」が、神奈川県・箱根のポーラ美術館の「アトリウム ギャラリー」で開催される。会期は7月22日〜9月24日。

平野薫 untitled –rain DDR– 傘 2014 Installation view : tim|State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold

平野薫 untitled –rain DDR– 傘 2014 Installation view : tim|State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold

 平野薫は1975年長崎県生まれ。2003年に広島市立大学大学院を修了後、07年に第1回shiseido art egg賞を受賞。08年にはACC日米芸術交流プログラムによりニューヨークで、翌09年に文化庁新進芸術家海外研修制度によりベルリンにて研修、10年にポーラ美術振興財団在外研修員としてベルリンでの研修を経て、現在精力的に活動を行っている。これまでの主な参加展覧会に、「Re-Dress」(SCAI THE BATHHOUSE、2012)、「服の記憶」(アーツ前橋、2014)、「Remembering Textiles」(LWL-Industriemuseum TextilWerk Bocholt、ドイツ、2016)、「交わるいと」(広島市現代美術館、2017)などがある。

平野薫

 そんな平野の個展「平野薫―記憶と歴史」が、ポーラ美術館の「HIRAKU Project」の第5回目の展示として開催される。同プロジェクトは、ポーラ美術館が17年10月にオープンした現代美術を展示するスペース「アトリウム ギャラリー」にて開催しており、96年からポーラ美術振興財団が助成してきた若手芸術家たちを紹介するプロジェクトだ。

  

 平野は古着や布製の小物などを糸の一本一本にまで分解し、それらを展示空間の中に再構成する繊細なインスタレーションを制作。ドレスや下着、靴、傘といった身の回りのモチーフは、元々の素材である糸の状態に戻されることで、よれや色褪せが一層顕在化する。そしてそれを身に付けていた人の「気配」や「身体性」、そして個人の「記憶」を強く感じさせるようになる。

平野薫 untitled –rain DDR– 傘 2014 Installation view : tim|State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold

 本展では、身近なモチーフから漂う個人の記憶や経験を扱いながらも、それを歴史という大きな流れの中に還元していくことをテーマとする4点(うち新作3点)を展示する。3点の傘(旧作1点、新作2点)を組み合わせたインスタレーションでは、作家が留学したドイツの傘(旧東ドイツ製)と、故郷・長崎、そして現住地・広島で入手した傘を使用。3つの都市で出会ったモチーフのインスタレーションが重なることで、これらが歴史的に強い意味を持つ場所であることが想起させられる。

平野薫 untitled –rain DDR–(部分) 傘 2014 Installation view : Arts Maebashi, Gunma Photo by Shinya KIGURE

 ほかにも、工業用のミシンや糸を使った新作インスタレーションも発表。本作は戦時中の重機製造にルーツをもつメーカーのミシンを用い、戦後日本の高度経済成長を支えた工業機器と、日々消費される衣服や繊維との関係性、そして近代日本の歴史を暗示するかのような作品。個人の記憶を歴史の中に還元すると同時に、歴史という漠然とした概念が「誰かの記憶や経験の集積」であることを、観る者に強く訴えかける本作は、これまでの平野の作風とは異なる、新たな展開を予見させる。精力的に作品を発表し続けている平野の新境地に注目したい。

平野薫 新作参考イメージ