戦前の福岡で結成された「ソシエテ・イルフ」とは何か。その活動を追う展覧会が福岡市美術館で開催へ

戦前の福岡で結成された前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」の回顧展「ソシエテ・イルフは前進する」が、福岡市美術館で開催される。本展では、福岡の前衛美術の系譜のなかで特異な存在感を放つその活動を写真作品や絵画から紹介。会期は2021年1月5日〜3月21日。

撮影者不詳 イルフ逃亡 1939 個人蔵

 戦前の福岡で結成された前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」。主なメンバーは写真愛好家の高橋渡、久野久、許斐儀一郎、田中善徳、吉崎一人と、のちにデザイナーとして知られる小池岩太郎、画家・伊藤研之の7名。写真愛好会や喫茶店の顔なじみだった彼らは1930年代半ばに集結し、「古い」の逆さ読みから「ソシエテ・イルフ」を名乗るようになった。

 そんな「ソシエテ・イルフ」の約30年ぶりとなる回顧展「ソシエテ・イルフは前進する」が、福岡市美術館で開催される。会期は2021年1月5日~3月21日。

久野久 海のショーウィンドウ 1938 個人蔵
吉崎一人 嬉戯 1938-41頃 東京都写真美術館蔵

 互いに意見を交わしながら、写真・絵画の制作、工芸品のデザインを行っていた「イルフ」。とくに福岡市近郊の海辺や街中で撮影した写真作品には前衛写真の技法・構図が駆使され、当時日本に紹介されていたシュルレアリスムや抽象芸術への好奇心、そして身の回りのものに造形の面白さを見出す視線は、メンバー同士が共有するものだった。

 1940年4月に発行した同人誌『irfl』のなかで彼らは「吾々自身の新しき世界を把握すべき」と述べ、「ソシエテ・イルフは前進する」と宣言。社会に役立つ作品が求められるムードを受け、戦時下の美術家たちの表現の幅が制限されるなか、「イルフ」は表現における前衛を貫こうとした。しかし戦時体制が全面化するとともにグループとしての活動は終息する。

高橋渡 エンピツ画 1937 個人蔵

 本展では、福岡の前衛美術の系譜のなかで特異な存在感を放つ「イルフ」の活動を、視覚表現の広がりを感じさせる写真作品や絵画、メンバーが作品を投稿していたカメラ雑誌などの関連資料によって紹介。彼らは何を目指して前進し、そして歩みを止めたのかを探る。

伊藤研之 音階 1939 福岡市美術館蔵

編集部

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