20世紀を代表する芸術家で、彫刻、舞台芸術、家具、ランドスケープデザインなど様々な分野で巨大な足跡を残したイサム・ノグチ(1904〜1988)。その芸術のエッセンスに迫る展覧会「イサム・ノグチ 発見の道」が、2021年4月24日より東京都美術館で開催される。
日本人の父とアメリカ人の母の元に生まれ、アイデンティティの葛藤に苦しみながらも、独自の彫刻哲学を打ち立てたノグチ。本展では、国内外の多数の大型作品をはじめ、30年以上に渡って取り組み続けられた光の彫刻「あかり」を含めて約90件の作品を3章構成で紹介。「彫刻とは何か」を追求したノグチの創造の軌跡をたどる。
第1章「彫刻の宇宙」では、1940年代から最晩年の80年代の様々な作品を展示。ノグチのライフワークとも言える、太陽と月に見立てた光の彫刻「あかり」の大規模なインスタレーションを展示室の中心に据え、《化身》(1947)《黒い太陽》(1967-69)《ヴォイド》(1971/80)など、ノグチの「彫刻の宇宙」を500平米におよぶ回遊式の会場で紹介する。
肉親との関係に葛藤があり、とくに詩人であった父親の米次郎とは複雑な間柄を持ったノグチ。父の故郷・日本の文化の諸相が見せる「軽さ」の側面は、ノグチが晩年にいたるまで自らの作品に取り込むことに情熱を傾けた重要な要素だった。第2章では、切り紙や折り紙からインスピレーションを受けて制作された金属板の彫刻や、真紅の遊具彫刻《プレイスカルプチュア》(1965-80頃/2021)など、ノグチの「かろみの世界」に注目する。
ノグチは、ニューヨークと香川県高松市牟礼町にアトリエを構え、往還しながら制作に取り組んでいた。現在、その2拠点にはイサム・ノグチ庭園美術館が開館している。とくに牟礼では野外アトリエがそのまま公開されており、四季折々の風光が味わえる豊かな自然環境で、石匠の和泉正敏とともにつくりあげた晩年の作品を含めてノグチの彫刻のあり方を示している。
第3章「石の庭」は、この牟礼に残された最晩年の複数の彫刻を美術館で展示する初めての試み。長い造形的実験につながる「発見」の道行きの到達地である牟礼のアトリエのエッセンスや、インスピレーションを与え続けてそれ自体が作品と言い得る空間全体の味わいに迫り、ノグチ芸術の精髄を体感することができる。
丹下健三、三宅一生、磯崎新など日本人クリエーターとの交流も深く、多くのアーティストからリスペクトされているノグチ。その半世紀を超える道のりを多様な作品を通じて体感してほしい。