藤田嗣治と彼が愛した布たち

　近年ますます再評価の高まる画家・藤田嗣治（1886〜1968）。藤田が生涯工芸品を愛したことはよく知られており、自身の制作のなかでも、染織品や衣装を絵の重要なモチーフのひとつとして描いた。
　
　本展は、藤田作品に描かれた染織品を通じて、その画業を検証する初の試み。藤田がパリで名声を勝ち得た1920年代の作品から、中南米旅行を経て日本に帰国していた時代の作品を中心に、画中に描かれた布や衣服について解き明かし、藤田の画業に新しい光を当てる。とくに日本滞在期の作品については、メゾン=アトリエ・フジタ所蔵の、藤田が愛蔵した染織品を作品とともに展示する。

　さらに、画家として世に出る前から、布に並々ならぬ関心を寄せていた藤田が、布を集めるだけでなく針仕事にも熱心であったことにも注目。藤田によって収集された布や、自ら製作した衣服や小物を展示し、そこからフランスでの生活、日本への思いを読み解くことを試みる。