渋谷のマンションの一室にある日比野克彦のアトリエは、制作の場、事務所、倉庫、あるいは生活の場といった多様な役割を持ちながら現在に至る。「日比野克彦」という人間を表すその空間は、老朽化による建て替えのために間もなく失われる。
これに伴い、東京藝術大学の文化財保存修復センター準備室は、日比野のアトリエを保存するプロジェクトを発足。文化財としてアトリエの保存を考えるうえでは、作品のみならず、画材から生活用品、壁の落書き、マンション、さらにはアトリエが存在する渋谷の街までもが保存の対象となる。
準備室では、東京藝術大学大学美術館 陳列館で展覧会「日比野克彦を保存する」を開催中(~11月15日)。本展は、展覧会アトリエを構成する各要素について、文化財保存分野における手法をはじめとする様々な保存の手法を提示することにより、アトリエの保存、ひいては日比野克彦の保存に挑むものだ。
また今回、「芸術と保存」をテーマに同大学の教授・講師陣にインタビューを実施。その内容は、本展のパネル展示で読むことができる。