NEWS / PROMOTION - 2018.9.29

上野を巻き込むフェスティバル。日比野克彦がプロデュースする「UENOYES」が開幕

東京を代表する文化施設が集まる上野公園。ここを舞台に、アーティスト・日比野克彦がプロデュースするフェスティバル「UENOYES」が開幕した。今回が初開催となる同イベントは何を目指すのか?

UENOYESのメイン会場である上野公園の噴水広場

 昨年度まで上野公園で開催されていた「TOKYO数寄フェス」などのアートイベントでは、大巻伸嗣が大作を上野公園で発表するなど、その都度注目を集めてきた。その実績を踏まえて行われるのが、9月28日から始まった「UENOYES(ウエノイエス)」だ。

 「UENOYES」の総合プロデューサーを務めるのは、東京藝術大学美術学部長でアーティストの日比野克彦。また、パリ日本文化会館展示部門アーティスティック・ディレクターで美術評論家の岡部あおみが国際部門ディレクターを務めている。

 日比野はこのイベントについて「上野の一番の魅力は、誰もが『いていいんだ』と思える懐の深さ。『NO』もあって『YES』もあっていいということでUENOYESというタイトルつけた」と話す。

 メイン会場となるのは、上野公園の中でも様々なイベントが開かれることが多い噴水前広場。日比野はここを選んだ理由として「広場こそが上野の一番濃いところ。それぞれに人たちが美術館や博物館、動物園などいろんなところで見たものがミックスする場所です」と話す。そんな広場でまず目を引くのは、いくつものイーゼルが並ぶ光景だ。

「スタチュー写生大会」の様子。この日は日除けの傘が配られた

 「スタチュー写生大会」と題されたこの場所では、屋外彫刻に扮する路上パフォーマー(スタチュー)がモデルとなり、参加者がその様子を写生するというもの。会場には東京藝術大学の在学生や卒業生がアドバイザーとして写生のアドバイスなども行っている。本物の彫刻のごとく、完全に静止したパフォーマーたちのテクニックに触れつつ、不特定多数の人々がスケッチを通して創作活動に触れる機会を提供する。

「スタチュー写生大会」の様子

 また、その奥では音を軸にした作品制作とパフォーマンスを行っている西原尚と、美術家・藤田龍平によるパフォーマンス&ワークショップ「全身の耳になる、全身の目になる」が開催。耳の聴こえにくい、あるいは聴こえない人たちや、目が見えにくいあるいは見えない人たちと対話を重ねたふたりが、事前に一般公募した参加者とともに、耳や目、手足や体の使い方を見直すワークショップを実施。会期中にパフォーマンスを披露する。

西原尚がつくった楽器付きの手押し車を押す子供

 ダンサー・アオキ裕キが率いる路上生活経験者のダンスグループ「新人 H ソケリッサ!」は、これまで2ヶ月半にわたり噴水前広場で公開稽古を行ってきた。公園の歴史や文化施設、多様な人々が集う場所をリサーチし、そのリサーチから生まれたパフォーマンスを見せる。

新人 H ソケリッサ!のメンバー。取材時には「休憩する」というパフォーマンスを行っていた

 今回のプログラムでは海外からもアーティストが参加している。スペインのアーティスト、ホセ・マリア・シシリアだ。2011年3月11日以降、何度も東北の被災地を訪問してきたホセ。ここでは、「東北のアートプロジェクト in 上野」として、ワークショップや展示を展開する。

 「東北での活動は、自分自身の体験として得るものが大きかった。東北の人々と一緒に過ごす時間が大事でした」と話すホセ。広場では長年、東北からの玄関口として機能してきた上野という場所性をもとに、「星屑屋台」として東北での自身の活動を映像やパネルで紹介。また、参加者それぞれの東日本大震災のイメージや体験に基づいて和菓子の彫刻をつくるワークショップを行う。

東京国立博物館の目の前に設置された星屑屋台

 また、上野公園至近の国立国会図書館国際子ども図書館も見逃せないポイントだ。同館では、東日本大震災の津波の轟音をデータ化し、布にデジタルプリントした8点組の《アクシデントという名の国》を展示。また、ホセが今回のために制作した新作も見ることができる。

国立国会図書館国際子ども図書館に展示された《アクシデントという名の国》

 津波発生時に南三陸町の防災庁舎で避難を呼びかけ続け、多くの町民の命を救いながら自身は命を落とした遠藤未希。ホセは13年にも遠藤の声をもとにしたブロンズ彫刻を制作しているが、今回は紙粘土というメディウムで《数千年にわたる遠藤未希への想い》を発表。これらの作品キャプションには、子供に向けたふりがな付きの簡易版も用意されている。「地上にあるものはすべて死にゆくものですが、私たちは不在や喪失とともにあるのです」というホセの言葉通り、震災を未来に語り継ぐという姿勢が強く感じられる。

《数千年にわたる遠藤未希への想い》の一部

 多種多様なプログラムが展開される「UENOYES」の3日間。日比野は「人とのつながりが生まれる場所としての上野、を発信していきたい」と話す。「この3日間だけでなく、アーティストたちは年間通じて活動していきますし、今後は各美術館との連携やアメ横など上野広域を巻き込んでいくことも考えています」。

日比野克彦

 日比野はこう続ける。「(このプロジェクトの)ゴールイメージは、参加者たちが様々な立場の人と出会うことで、未知のものに対する先入観が少しでも弱まればいいですね。公園という基本的にはバリアフリーの場なので、ダイバーシティを受け入れるということが浸透すればと思います」。

 「文化の杜」を謳う上野公園、あるいは上野がこのイベントをきっかけにどのように展開されていくのか。まずは「UENOYES」に参加し、その内容を確かめてほしい。