アート界に見られる著しいジェンダーアンバランスや相次ぐハラスメント。この状況に対し、アーティストが展覧会というかたちで声を上げる。
「カナリアがさえずりを止めるとき」と題された展覧会は、2017年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家として知られる岩崎貴宏が企画代表を務めるもの。岩崎は、今年に入って母校である広島市立大学芸術学部の教員がハラスメントで懲戒処分されたことを挙げ、男性優位構造ゆえのハラスメントが美術業界で相次いで起きていると指摘。「教育現場でハラスメントが繰り返されないよう、すべての関係者が当事者視点で検証する機会が必要」と考え、本展を企画したという。
会場となるのは、広島市立大学芸術学部CA+TラボラトリーとAlternative Space CORE。同大あるいは広島に縁がある16作家が参加する。参加作家は青原恒沙子、沖中志帆、金山友美、岸かおる、久保寛子、小松原裕輔、小森宥羽、隅田うらら、程釬、友枝望、中川晶子、松田莉奈、宮内彩帆、安村日菜子、桺谷悠花、山下栞。
タイトルにある「カナリア」とは、カート・ヴォネガットがアーティストを社会の危機をいち早く感知する存在ととらえ、「炭鉱のカナリア」に例えたことから引用されたもの。ステートメントには「流動する社会にとって命綱ともいえるカナリアが、そのさえずりを止めるときが来ないように、私たちは作品に潜む多様な声に耳を傾け、歪んだ社会構造を改めて考察する必要があると考えます」とその企画意図が語られている。
2019年の「あいちトリエンナーレ」では、芸術監督・津田大介が参加作家の男女比を同数にすることで、アート界に大きな波紋を広げた。今年に入ってからは、東京藝術大学で女性作家のみによる企画展「彼女たちは歌う」が開催されるなど、男性優位のアート界に対して疑問を投げかけるような動きが目立つようになってきている。