合同会社カオスラの代表社員を務めていた黒瀬陽平が、ハラスメントを行っていたとして退任した件で、被害者の女性が詳細をnoteで公開した。
noteのなかで女性は、黒瀬によるセクシュアルハラスメントおよび、カオスラによる組織的パワーハラスメントとその隠蔽について詳細を時系列で執筆しており、「私は美術業界で二度とこのようなことが起きぬよう事実関係を公表する必要があると判断し、こうして私個人の判断で公開する」としている。
今回の件が発覚したのは7月23日。株式会社ゲンロンが「ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校」の事業において、「重大な契約違反を確認」したとしてカオスラとの契約解除発表。その翌日、カオスラは黒瀬によるアシスタントスタッフへのパワーハラスメント行為があったとし、退任を発表していた。
カオスラ側は、ハラスメント行為について調査委員として弁護士を着任させ、詳細を調査する意向を示しているが、ハラスメントへの加担を認めたアーティスト・藤城嘘が代表社員のひとりとして名を連ねているという状況だ。はたしてこのような構造で公平な調査が行うことはできるのか、大きな疑問が残る。
本件のような事例が後を絶たない一因として改めて考えたいのが、圧倒的男性優位の美術業界の構造だ。日本の美術界では、美術館の収蔵作品においても男性作家の作品が圧倒的に多く、またポジションでも館長クラスでは男性が8割以上を占める。今回の黒瀬およびカオスラによるハラスメントは巨大組織のみならず、小規模な場においても美術業界では男性が圧倒的に優位である、という現実を突きつけた。
※美術手帖では、美術関係者の論考を通してこれからあるべき「ジェンダーフリー」のための展望を示すことを目的としたシリーズ「ジェンダーフリーは可能か?」を2019年6月から12月にかけ連載したが、そのなかには黒瀬がインタビューに応じた回(現代の作家は「ジェンダー」に応答できているか? 美術家・黒瀬陽平インタビュー)もあった。今回の件は黒瀬がインタビューに応じた時点でも進行していたが、インタビューに応じた事実を残す必要性はあると判断し、記事の削除等は行わない。