環境問題や経済システムの矛盾に発想を得て、作品を制作してきた米谷健+ジュリア。その個展「Dysbiotica:ミクロからマクロへ - バランスが崩壊する世界」が、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催される。会期は8月28日~9月26日。
制作のモチベーションは「不安」にあると語る米谷健+ジュリアは、今回「微生物」に着目。白化したサンゴをびっしりとまとったかのような男性像や妊婦、鹿の頭部などで構成される新作《Dysbiotica》を、今年1月から3月にかけて、滋賀県立陶芸の森でのアーティスト・イン・レジデンスで制作した。
「Dysbiotica」は、腸内細菌叢のバランスの崩壊を意味する「Dysbiosis」からの造語。ふたりの数年間にわたる無農薬農業の経験をきっかけに、オーストラリア・クイーンズランド工科大学微生物研究所との共同作業を通じて得た着想がもとになっている。
「絶妙なバランスで構築された微生物群によるミクロ世界の崩壊がマクロ世界へと連鎖していくこと、そして、人と動物と微生物の織り成す共生の世界の崩壊」というテーマで、世界的な規模で拡大するサンゴの死滅を題材とした同作。白く硬質な表面は終焉の気配や空虚な印象を感じさせるいっぽう、妊婦や鹿など生命力あふれるモチーフに、未来へのわずかな希望が託されている。
ミクロの世界からのアラートに耳を傾ける米谷健+ジュリアの作品は、まさにパンデミックが巻き起こったいまの世界と深くリンクするものと言えるだろう。