「VOCA展2012」でのVOCA賞受賞や、東京オペラシティアートギャラリーで個展「project N 62 鈴木星亜」(2015)を開催するなど、近年存在感を強める画家の鈴木星亜。現在、鈴木の個展「Surface 2014 - 2020」が、東京・神楽坂のMaki Fine Artsで開催されている。本展は、2013年から19年までの作品で構成され、鈴木の画家としての足取りをたどることができる。会期は6月28日まで。
鈴木は当初、写真をもとにした絵画を制作していた。これにより画面から記憶にないものを排除することを試みたが、写真のイメージに引きずられて制作は難航。10年以降は、目に見える風景を文字で記録し、そのメモに基づいて描く手法を取っているという。
水面を多く描いてきた鈴木は、本展のメイン作品も《水面14_01》としている。同作に描かれているのは、作品を最初に展示した第一生命日比谷本社前に広がる皇居のお堀。画面上部の石垣と水面との際が極端なカーブで誇張され、また左下には木の幹が画面を斜めに横切るように描かれる。大きな割合を占める緑色の水面が印象的な作品だが、その両者がその緑のなかでアクセントとなっている。
また画家の関心は波紋にある。鈴木のいくつかの作品において、波紋はときに蓮の葉や木の葉の緑と共鳴し、ときに山の稜線と似通った描線で表現される。
本展には、キャンバスに皺が寄った作品がいくつか並ぶ。当然皺があると描きにくくなるが、引っかかりのないフラットな画面に描いていると支持体の存在が希薄に感じると鈴木は語る。色の際を皺の凹凸に合わせたり、逆に皺の凹凸に抗うように筆を進めたりと、描く際の障害となる皺を積極的に利用しているようだ。
滑らかな二次元の表面にはない凹凸という抵抗感を導入して、絵画の素材感や物質感を確かめる鈴木。同時に三次元の世界を二次元の平面上に無理やり押し込めている不自然な絵画世界に、三次元性を取り戻そうと試みている。