糸川ゆりえ、大久保薫、戸田悠理、村田啓によるグループ展が、東京・天王洲の児玉画廊で開催されている。会期は2月29日まで。
糸川は、透明色や銀色の絵具、ラメなどを多用したみずみずしい絵画を手がける。単純に装飾的な要素としてではなく、銀色の絵具やラメの反射による視覚効果を利用することで、画面上で図像が揺らめくように企図しているという。
一貫して男性の肉体に関心をもって作品を描き続けている大久保は、過去作にはフェンスのようなモチーフを画面の手前側に置き、奥の人物像を遮るような構図を組むなど、意図的に描きづらい状況をつくってきた。あえて抵抗感のあるプロセスを踏むことで、ストレートにイメージを組み上げてしまう事態に抗っているのだという。そのような「抵抗」から、重なり合う絵具に複雑な表情がもたらされる。
戸田の作品は、画面全体の彩度の高いグラデーションや、人物のファッションに注目させるような脱力感のある登場人物のポージングといった現代的な要素が特徴だ。また記号化されたその表象──上書きされている人物たちのイメージ──はインターネットから引用されたものであり、「現代性」の出自について深い洞察を与える
村田は、本展では唯一の写真の作家だ。複数のイメージがぼやけながら重なり合う画面から、コンピュータによるデジタルコラージュを思わせるが、いずれもストレート・フォトである。それぞれ独自の手法を追求してきた、個性豊かな4名の作品は、ひとつの空間でどのように作用しあうだろうか。ギャラリーのウェブサイトでは、評論家のgnckが本展に寄せたテキストを読むことができる。