初代・岩崎彌太郎による1870年の「九十九商会」設立から1945年の財閥解体にいたるまで、4代にわたって文化財に多大な関心を抱き、豊かなコレクションを築いてきた三菱。その創業150周年を記念し、東京・丸の内の三菱一号館美術館で「三菱の至宝展」が開催される。会期は7月8日~9月22日。
本展には、三菱一号館を構想した岩崎彌之助が創設し、嗣子・小彌太が拡充した静嘉堂と、岩崎久彌によるアジア最大の東洋学研究図書館である東洋文庫の所蔵品から国宝12点、重要文化財31点が集結。三菱経済研究所の所蔵作品とあわせ、名品約100点を紹介する。
静嘉堂からは、世界に3点のみ伝存し「奇跡の茶碗」とも呼ばれる《曜変天目》や、俵屋宗達が描いた《源氏物語関屋澪標図屏風》、鎌倉期の名刀として伝わる《太刀 銘 包永》などが出展。また東洋文庫のコレクションからは、中国最古の詩集の唐時代の書写本である『毛詩』や、中国最初の正史で現存最古の古写本『史記泰本紀』などを見ることができる(すべて国宝)。
加えて見どころとなるのは、足利義満からの伝来を誇り、本能寺の変における罹災や大坂夏の陣での大破を経て今日の姿に甦った茶道具《付藻茄子》や、近代日本画をリードした画家・橋本雅邦の代表作であり、近代絵画で初めての重要文化財に指定された《龍虎図屏風》(1895)といった至宝の数々。
また、マルコ・ポーロの『東方見聞録』や、シーボルトが日本の植物学者たちの協力を得て収集した植物標本を元にまとめ、ドイツの植物学者・ツッカリーニが解説を付した図鑑『日本植物誌』など、東西交流史における貴重な資料も展示される。
岩崎彌太郎から小彌太にいたる芸術文化の研究・発展を通じた社会貢献の歴史をたどりつつ、貴重な作品約100点を紹介する本展。東洋史、日本・東洋美術史をかたちづくったコレクションを展覧する、またとない機会となるだろう。