ゴッホ、ゴーガンに加え、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットンなど「ナビ派」の画家たちによって描かれた子供に焦点を当て、都市生活や近代芸術と子供との関係を検証する「画家が見たこども展」が、三菱一号館美術館で開催される。会期は2020年2月15日~6月7日。
同館の開館10周年を記念して行われる本展。ボナール美術館の全面協力のもと、国内外の美術館や同館の所蔵品から「ナビ派」を中心とした油彩、版画、素描、挿絵本、写真など約100点を展覧する。
起点となるのは、力強い色彩や単純化された素朴な表現で子供たちを描いたポール・ゴーガンとフィンセント・ファン・ゴッホ。彼らは、1888年から1900年頃のパリで起こった芸術運動のひとつである「ナビ派」に大きな影響を与えた。ポール・セリュジェ、ピエール・ボナール、モーリス・ドニ、エドゥアール・ヴュイヤール、フェリックス・ヴァロットンなどナビ派の画家たちは、以降子供たちの姿を多く描くようになる。
ナビ派の画家たちは、都市とその活気に魅了されて作品を制作。日常のなかに近代性と詩情を探し求め、生活者として、観察者として子供たちを見つめた。たとえばボナールは街中で遊ぶ子供や、甥、姪と過ごした家族の情景を描いたほか、「日本かぶれのナビ」のあだ名を持ち、浮世絵で見られるような構図を用いた作品《学童》(1900)も手がけている。
自ら「アンティミスト」(親密派)と称したヴュイヤールは、子供たちのファッションに注目した作品を手がけたほか、室内の情景や家族の風景を好んで描いた。ほかの画家たちとは反対に9人の子供に恵まれたドニは、自分の子供たちの肖像を、理想化された家族の光景として描いている。今回は実験的な点描風の技法による《赤いエプロンドレスを着た子ども》(1897)や、子供のために手がけた物語の挿絵本などを見ることができる。
そしてヴァロットンの作品からは、当時流行したセーラー服を身に着けた子供の姿が印象的な《公園、夕暮れ》(1895)などが出展。また《ベレー帽をかぶる子ども》(1889)は初期の写実的な版画群の1枚で、木版画を始める前の貴重な作例となっている。
加えて注目したいのは、1900年以降にナビ派の画家たちがそれぞれの道を歩むなか、南仏ル・カネに拠点を移し、79歳でその生涯を閉じるまで制作を続けたボナール晩年の作品群。児童画を思わせる自由闊達な筆で描かれた作品には、純粋な子供の魂への回帰と、「子供の世界」に対するひとつの到達点を見ることができるだろう。
※2020年3月30日追記
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、3月16日~31日の臨時休館期間を当面のあいだ延長、4月6日の開館記念日イベントも中止。詳細は公式ウェブサイトを参照