写実から写意へ。岸田劉生の画業の変遷をたどる展覧会がひろしま美術館で開催

大正時代、独特の写実表現で強烈な個性を発揮した画家・岸田劉生。その「写実から写意へ」の変遷を、約170点の作品でたどる展覧会「岸田劉生展―写実から、写意へ」がひろしま美術館で開催される。会期は11月9日~2020年1月13日(展示替えあり)。

岸田劉生 支那服を着た妹照子像 1921 ひろしま美術館蔵

 生涯渡欧することなく日本で独自に西洋絵画を受容し、独特の写実表現で個性を発揮した画家・岸田劉生。その画業の変遷をたどる展覧会「岸田劉生展―写実から、写意へ」が、ひろしま美術館で開催される。会期は11月9日~2020年1月13日。

 1908年から、黒田清輝の白馬会葵橋洋画研究所で指導を受けた劉生。当初はポスト印象派風の作品を描いたが、その後アルブレヒト・デューラーやヤン・ファン・エイクなど北方ルネサンスの画家の影響を受けた肖像画を多く手がけた。そして晩年には対象に潜む「内面の美」の表現を求め、水彩画や素描、日本画を描くようになる。

岸田劉生 夏の路(鵠沼海岸) 1922 笠間日動美術館蔵
岸田劉生 麗子十六歳之像 1929 笠間日動美術館蔵

 例えば自身の娘・麗子を描いた日本画は油彩画に比べると、まるで別の人物であるかのようにデフォルメされている。こうした差異からは、劉生が最終的に見たものを再現する西洋的な「写実」ではなく、対象の本質を表現する「写意」に至ったことがわかる。

 本展では笠間日動美術館のコレクションを中心に、初期から晩年の絵画、版画、装丁画など約170点で「写実」から「写意」へと連なる過程を紹介。劉生による西洋美術の受容とその超克のあり方を検証し、日本近代美術の一断面を再検討する。

岸田劉生 『白樺十周年記念集』見返し 1920 笠間日動美術館蔵
岸田劉生 歳寒三友之図 笠間日動美術館蔵

編集部

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