神秘的な写実画で知られる岸田劉生(1891~1929)と、洒脱な挿絵で独自の地位を築いた木村荘八(1893~1958)。同時代を生き、長く活動をともにした2名を紹介する展覧会「素描礼賛 岸田劉生と木村荘八」が、埼玉県のうらわ美術館で開催される。
岸田は、素描を「美術の骨子」と評し、いっぽうの木村は「挿絵すなわち素描かつ本格的絵画」と説いた。10代の頃に白馬会の画塾で出会ったこの2名は、いち早くポスト印象派へ関心を向け、情熱的な色彩による作画ののち、素描の重要性への認識を深めていった。
それぞれ異なる家庭環境ではあるものの、互いに銀座や日本橋両国という商業の中心地で生まれ育った岸田と木村。加えて、著名な父を持ち、その父を中学生時分に亡くしたという共通点もある。
本展は、笠間日動美術館、うらわ美術館、小杉放菴記念日光美術館が所蔵する、岸田と木村による素描、挿絵、単色画などを中心とした約200点で構成される。数々の名品を通じて、岸田と木村の交流を見つめるとともに、創作の舞台となった銀座築地近辺の変容を2名の回想文などからたどることができる。