ジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダは2002年にコラボレーションを開始し、美術史やアートのシステム、そこに関わる人々に言及する作品を発表してきた。現在はベルリンを拠点に、ヨーロッパ各地やアメリカで展覧会を行っている。日本では「第10回恵比寿映像祭」(2018)や「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」(国立国際美術館、2018)などの展覧会に参加した。
このふたりのセレクションによる展覧会「Surface and Custom」が、資生堂ギャラリーで開催される。会期は10月18日~12月22日。
ふたりは今年4月の個展で、資生堂のビジュアル・イメージを再構成したスライドショー《Moulting》を発表。同作は、日本が近代化する過程において資生堂が西欧のモダン・アートを積極的に取り入れていたことに注目し、広告・印刷物からアートやファッション、ディスプレイシステム、都市の生活様式などのテーマに沿ってイメージを抜き出したビジュアル・ポエトリーだ。本展でふたりは、これらのテーマをもとに作家のセレクトを行った。
サーラ・ドゥラートは「展覧会」という状況そのものに関心を持ち、観客をありのままに存在する作品に直面させることを試みる。ピエール・ルギヨンは、アートのシステムの再考を問いかける「The Museum of Mistakes(間違い美術館)」を自ら設立。本展では、日本の絣(かすり)職人と共同制作したペインティングを展示する。インフラと社会構造をひとつの道具として都市に介入するクララ・リーデンは東京で滞在制作を行い、新作を発表する。
また、自身をほかの分野からアートにやって来た「不法侵入者」と定義するカリッサ・ロドリゲスは、昨年発表した映像作品《The Maid》を展示。そして、台座そのものを作品とする「台座彫刻」で空間に働きかける竹岡雄二は、1986年のドイツでの初個展で発表したドローイングを展示する。
本展では、西欧文化を取り込みながら独自性を築いた資生堂のビジュアル・イメージの変遷と、歴史や既成概念を問い直すことで自身の作品に昇華させるアーティストたちの実践を見ることができるだろう。