静謐なモノクローム写真の作品を中心として、欧米を拠点に活動している写真家、山本昌男の個展が清里フォトアートミュージアムにて開催される。会期は10月5日〜12月8日。
愛知県蒲郡市の代々建築に携わる家に生まれた山本。幼い頃から豊かな自然と"ものつくり"の精神に触れながら育った作家は、絵画など様々な表現に取り組み、20代半ばで自身の表現手段に写真を選ぶ。
デビュー作の「空の箱」「中空」シリーズは、手のひらサイズの小さな写真を旅の思い出のようにアンティークの革鞄に詰め込む、あるいは絵を描くように壁に展示するなど 、写真で空間全体を構成する実験的なインスタレーションが注目を呼んだ。その後制作スタイルは変化していくが、つねにその根底にあるのは「人間は自然のほんの一部分であり、一体化した存在」という理念。身近な風景や自然、見過ごされてしてしまうような小さな日常の欠片をすくい上げるような作品を生み出している。
本展は、デビュー作の「空の箱」「中空」をはじめ、最新作「盆栽」までの約170点による、国内美術館初の展示となる。タイトルの「手中一滴」とは、山本による造語で、「一滴の露にも宇宙が宿る」という禅の教えに基づく。盆栽師・秋山実とのコラボレーションが実現した「盆栽」シリーズなど、人と自然の関係によって生み出された美しさに着目した作品が展示される。
高度なモノクロ技術と日本的な精神性が織りなす緊張感を、ぜひ会場で体感してほしい。