12世紀の貴重なイコンに始まり、約20万点の所蔵作品を誇るロシアの国立トレチャコフ美術館。この豊富なコレクションから19世紀後半から20世紀初頭の激動のロシアを代表する作家、クラムスコイ、シーシキン、レヴィタン、ヴェレシャーギンらの作品72点が来日する。
開催に際し、同館館長のゼリフィーラ・トレグーロワは「何が一番鑑賞者の心に響くかということを考え、常設展示されている作品から、当時のロシアの画家の目でどのようにその時代が見えていたかをご覧いただける作品を選びました」とコメント。
本展では、イワン・クラムスコイが1883年に描いた女性像《忘れえぬ女(ひと)》が約10年ぶりに来日。クラムスコイは、制約の多い官製アカデミズムに反旗を翻し、ありのままの現実を正面から見据えて描くことを目指した画家の集団「移動派」の中心人物として知られている。
また、クラムスコイ作品として、闇の中で月明かりに照らされる幻想的な女性を描いた《月明かりの夜》が日本で初公開。世界各国の主要美術館から展覧会開催を打診されるなど、注目度が高まる移動派の作品を間近に見る機会となっている。
このほか、シーシキン《雨の樫林》やバクシェーエフ《樹氷》などの作品を通して見る当時のロシアの日常も、本展の見どころのひとつ。日露文化交流年でもある2018年、ロシア屈指の美術館のコレクションを堪能したい。