芸術作品を取り巻く「時間」をテーマに。企画展「タイムライン 時間に触れるためのいくつかの方法」が京都大学総合博物館で開催

京都大学総合博物館で、企画展「タイムライン 時間に触れるためのいくつかの方法」が開催される。本展には井田照一、大野綾子、加藤巧、𡈽方大、ミルク倉庫+ココナッツの5組が参加し、私たちと芸術作品のあいだにある時間と生について考える。会期は4月24日〜6月23日。

井田照一《Tantra》(1962-2006)より No.385 2005 豊田市美術館蔵

 京都大学総合博物館で、企画展「タイムライン 時間に触れるためのいくつかの方法」が開催される。

 本展には井田照一、大野綾子、加藤巧、𡈽方大、ミルク倉庫+ココナッツが参加。5組のアーティストの実践に加え、インストーラー、修復士、美術史家がそれぞれの立場から、「モノ」としての美術作品がたどる生の過程(タイムライン)を浮き彫りにする術を探る。

 起点となるのは、「Surface is the between―表面は間である」というコンセプトを掲げ、版画の概念を押し広げる活動を行った井田の作品だ。1962年から2006年にこの世を去るまで制作を続けた《タントラ》シリーズは、作家の生命の記録とも言えるもの。晩年の井田は、病に冒された自らの皮膚や体液を作品に埋め込み、経年変化の果てに腐敗する素材と死に向かう自分の肉体を取り結ぶような制作を行っていた。

井田照一《Tantra》(1962-2006)より No.385 2005 豊田市美術館蔵

 そして参加作家の大野は、現代における石のあり方を模索し、力強い石を用いて軽妙な彫刻を生み出す。また、加藤は自らも絵画作品を手がけながら、15世紀の絵画技法家であるチェンニーノ・チェンニーニの『絵画術の書』の研究を起点に、絵画材料研究を行っている。

 加えて𡈽方は、芸術祭や展覧会のインストールに携わるいっぽう、気温や湿度などの外的要因によって状態が変化するインスタレーション作品を発表。電気設備や造園など異なる職能を持つ7人によるユニット「ミルク倉庫+ココナッツ」は、議論を繰り返しながらひとつのインスタレーションを制作する。

 本展では作品のほかにも、作品の科学分析結果や、作家の声の聴取(オーラル・ヒストリー)を並べて展示。また、2016年から企画されていた展覧会の成立過程も見ることができる。本展では、作品の生のあり方をたどり、博物館という場所で「モノ」と私たちの間に等しく流れる「時間」と出会い直すことを試みる。

編集部

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