「五重塔」で知られる京都を代表する寺院・東寺。そこに伝わる文化財の全貌を紹介する特別展「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」が東京国立博物館で開催される。
東寺の正式名称は真言宗総本山教王護国寺。平安遷都に伴い、王城鎮護の官寺として西寺(現存せず)とともに建立された。当時、京都で建立が許されたのは東寺と西寺の2つの寺院のみ。その後、唐で密教を学んで帰国した空海(774~835)が823年に嵯峨天皇より東寺を賜り、真言密教の根本道場とした。
この空海がもたらした密教の造形物は、いまなお東寺で受け継がれており、それらは日本を代表する仏教美術として知られている。
本展は、創建から1200年以上にわたり、守り伝えられてきた東寺の仏教美術の全貌を紹介するもの。会場は「空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ」「密教美術の至宝」「東寺の信仰と歴史」「曼荼羅の世界」の4章で構成。国宝だけでも《五大尊像》《風信帖》《密教法具》《十二天屏風》《両界曼荼羅図(西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅])》《東宝記》など、名だたる仏教美術が展示される。
なかでも見どころとなるのは、東寺講堂に安置されている21体の仏像のうち過去最多となる15体が展示される仏像曼荼羅だ。東寺の立体曼荼羅は、五仏(※大日、阿閦(あしゅく)、宝生(ほうしょう)、阿弥陀、不空成就如来)、五菩薩(※金剛波羅蜜多、金剛薩埵(さった)、金剛宝、金剛法、金剛業(ごう)菩薩)、五大明王(※不動、降三世、軍荼利、大威徳、金剛夜叉)に加え、※梵天、帝釈天と四天王(持国、増長、※広目、※多聞)の21体からなる仏像群。(※は本展不出品)
これは、密教の根本経典である『金剛頂経』の世界観を立体的に伝えるために安置されたものであり、本展では、21体からなるこの立体曼荼羅のうち、過去最多となる国宝11体、重要文化財4体の合計15体が出品。その多くが839年に開眼供養された像で、会場ではほとんどの像が360度の角度から鑑賞が可能となる。
このほか、本展では会場に「後七日御修法」の堂内を再現。後七日御修法は、空海によって始められた鎮護国家の法会であり、真言宗でもっとも重要な秘密の儀式。本展では後七日御修法に関連する仏具や仏画を通じて、その様子を伝える。
国宝31件、重要文化財58件を含む109件(190点以上)という膨大な文化財が並ぶ本展は大きな注目を集めそうだ。