2019.1.11

自閉してしまった時間を照らすアートの光。元ひきこもりの美術家・渡辺篤が写真集出版記念展を開催

美術家・渡辺篤による「アイムヒア プロジェクト」より、ひきこもり生活を送る人々が自らで撮影した部屋の写真を集めた写真集が2月16日に刊行される。また、写真集の刊行にあわせて、横浜・黄金町の「高架下スタジオSite-Aギャラリー」にて出版記念展も開催。本展では、写真集の販売および掲載写真を中心とする大型のインスタレーションや映像などが展示される。

© I'm here project 2018-2019
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 渡辺篤は1978年神奈川県生まれの美術家。東京藝術大学在学中より、新興宗教や経済格差、ホームレス、精神疾患などの、社会においてタブーとして扱われうる様々な問題や状況をテーマに、批評的な作品を発表してきた。

 社会問題に対してアートが物理的/精神的に介入することで、解決に向けて直接的な作用をおよぼす可能性を追求している渡辺。近年では、不可視の社会問題でもあり、自身も元当事者である「ひきこもり」の経験をもとに、心の傷を持った人々と協働し、インターネットを介したプロジェクトを多数実施してきた。社会、文化、心理、福祉にもおよぶその取り組みは、いずれも当事者性と他者性、共感が持つ可能性と不可能性について追求するものである。

 そして今回、そのうちのひとつである「アイムヒア プロジェクト」より、ひきこもり生活を送る人々が自らで撮影した部屋の写真を集めた写真集が刊行される。「アイムヒア プロジェクト」は、「ひきこもり」にまつわる問題に対し、新たな当事者発信のかたちを模索し、当事者の尊重と社会への周知や問いを提示する企画だ。

 この写真集の刊行にあわせて、横浜・黄金町の「高架下スタジオSite-Aギャラリー」で出版記念展も開催。本展では、写真集の販売および掲載写真を中心とする大型のインスタレーションや映像などが展示される。

 ひきこもり当事者が自ら撮影した約170枚におよぶ部屋の写真。それらは、人生における困窮や自閉してしまった時間も、アートを通じてクリエイティブな価値になりうることを示している。

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