アーティストとして制作を行う傍ら、日本のストリートカルチャーに焦点を当てた企画チーム「SIDE CORE」の中心人物としても活動している松下徹。そのアーティストならではの視点とリサーチによって、ストリートカルチャーに焦点を当てたメディアへの寄稿や、レクチャー、トークショーにも参加するなど、その活動の範囲を広げている。
今回、東京・西麻布のSNOW Contemporaryで開催される個展「CUTTER」では、高電圧電流が残した焼け跡や、振り子の軌道で描いた曲線、絵具のひび割れなど、様々な現象やシステムが生み出す動きの痕跡をコラージュした絵画作品の新作を展示。
この自動的なシステムによるペインティングは、工芸や化学実験から着想を得ており、とくにフラクタル(自己相似性)を持つかたちをつくり出すことに、松下は興味を寄せているという。全体と部分が比例の関係を持つ図形であり、時間や空間に対して固有のスケールを持たないフラクタル。おもに、インターネットのトラフィックパターンや金融市場の価格変動などが、このようなフラクタル構造を持っている。
松下は自身の絵画制作を「観測・収集する行為」としてとらえ、システムの按配を微調整しながら、複数のパターンをつくり出すことに成功。近年の松下は、つくり出した素材をコラージュする過程も加え、フラクタルに展開するパターンを解体したりつなげるプロセスを通じて絵画を構成している。松下曰く、コラージュは「絵画制作に動画の編集のような、絵のなかに時間を編集していく作業」。
松下によって、このように観測・収集・編集をしていくこと、いくつかの異なる行為や過程を経て制作される絵画は、独特のリズム感をもたらす幾何学的な抽象画となり、都市景観の地図や電気回路のような、スケールを横断するイメージをもたらすものだ。
本展では、その新作絵画とともに、絵画制作のプロセスを撮影した映像作品も初公開。多様な視点で都市に介入する企画を多く実践してきた「SIDE CORE」の松下だからこそ生み出せる複眼的な絵画作品を堪能したい。