1946年生まれの山崎博は、69年より写真をはじめ、以降フリーランスとして活動。73年からは16ミリフィルム映画作品を制作し、現代のコンセプチュアルな写真や映像の先駆者として知られている。
1970年代の初め、山崎は「いい被写体を探して撮る」ことへの疑いから、「被写体を選ばずに撮る」ことを模索し、つねに一定の枠組みや単純化された方法論をとりながら、「太陽」「海」「桜」といった普遍的なモチーフに一貫して取り組んでいる。計画性にもとづく制作と、制作過程で起こる偶然性が作品の大きな特質となり、豊かな光の表現も特徴的だ。
本展では、代表的な作品と新作を含む約200点を展示。写真家として活動し始めた初期作品シリーズ「EARLY WORKS」、自宅の窓からの眺めを撮影する「OBSERVATION 観測概念」、長時間露光によって太陽の光跡を視覚化した「HELIOGRAPHY」、フレームのセンターラインが水平線となるように海景を撮影した「水平線採集」、1985~89年まで現代思想を扱う季刊誌『クリティーク』の表紙として発表されたシリーズ「CRITICAL LANDSCAPE」、太陽の動きにあわせてカメラを移動させながら桜を撮影した「櫻」、そして本展のために制作した新作「水のフォトグラム」で展示が構成され、45年以上のキャリアにおよぶ作家の軌跡を振り返る。