表現が多様化し、広い視野と知識を以て文脈を理解することが重要視される今日の美術界。90年代以降は、フィールドワークなど人類学的手法を活用したポストコロニアル理論など、「文化の差異」や「自己と他者」などをキーワードに意味作用を問う作品が多く見られるようになった。
その動向を踏まえ、言語的な理解だけでなく、深部の感覚や感性の作用における差異を扱う表現が注目されつつあるいま、京都市立芸術大学が、「映画」「アート」「文化人類学」など、様々な領域に携わる表現者にフォーカスした「im/pulse: 脈動する映像」を開催している。
本展に参加するのは世界中を旅しながら記録映像を撮り続ける映画監督のヴィンセント・ムーン、即興的な身体の接触から始まるパフォーマンスや映像など、発表形態を固定しない表現活動で国内外で活躍するcontact Gonzo。これに加え、映像人類学者の川瀬慈率いる研究会「Anthro-film Laboratory」による公開型のセミナーや実験なども行われる。
「音」「映像」をふんだんに用いる本企画は、人々の深部に眠る感覚を揺さぶり、従来の学問のアーキテクチャー自体の拡張と発展へつながる実践となることを試みる。