山口藍は東京都生まれ。江戸時代を彷彿とさせる「とうげのお茶や」で暮らす遊女たちの姿を通し、「ただひたすらに美しいと感じられるものがつくりたい」という思いのもとに独自の世界観を構築。パネルに毛布を用いた山口特有の「ふとんキャンバス」をはじめ、和紙や板、貝殻、陶板など、様々な素材を通じてその世界を提示してきた。
東京で5年半ぶりの新作展となる本展のタイトル「今と古ゝに」は、美学者・中井正一の著書『美学入門』(1951)にある言葉「今とここに」から引用されたもの。山口はこれについて「つねに流れと調和し心地よく舟がするすると前進するように、人々の心に美しい印象として留まりながら止まらずに進む季節のように、いまの自分がその秩序に乗ってここに思うことを軽やかに描いてみようと考え題名にしました」とコメントしている。
会場では、紙や木を中心とした作品を配置しつつ、中心に置かれた紙の舟と壁面とを関連させ、全体がひとつの情景として見立てられるという。