「Manda-la」で切り取る世界の現状。写真家・宇佐美雅浩がキプロスで撮影した新作を発表

仏教絵画の「曼荼羅」のような構図で人物の世界観を表現する「Manda-la」シリーズの制作を行っている写真家・宇佐美雅浩が、ミヅマアートギャラリーで個展を開催。キプロスで1年間にわたって制作した新作を発表する。会期は2月21日〜3月24日。

宇佐美雅浩  ゼフラ・ネヴザット 南側、マリア 2017  © USAMI Masahiro, Courtesy Mizuma Art Gallery

 写真家・宇佐美雅浩は1972年千葉県生まれ。仏教絵画の「曼荼羅」のように中心人物を中央に配し、その人物の世界観を表現するものや人々を周囲に置いて1枚の写真に収める「Manda-la」シリーズを、大学在学中から20年以上にわたって制作し続けている。

 宇佐美はこれまで、東日本大震災の被害にあった福島や気仙沼、被曝地の広島などでこの「Manda-la」シリーズを撮影。撮影場所に何度も赴き、現地の人々とリサーチや対話を繰り返しながら行う制作スタイルで、日本が抱える問題や歴史、社会の有様を浮かび上がらせてきた。

宇佐美雅浩  アナスタシス・パヴル 北側、ガストリア/カレジック 2017  © USAMI Masahiro, Courtesy Mizuma Art Gallery

 本展では、宇佐美が2017年にキプロスで1年間をかけて制作した「Manda-la in Cyprus」を展示する。紀元前から幾度となく周辺の国々によって支配され、翻弄されてきた歴史を持つキプロス。首都・ニコシアは「世界最後の分断首都」といわれ、1974年のキプロス紛争以降、ギリシャ系キプロス人とトルコ系キプロス人は緩衝地帯(グリーンライン)によって南北に分断されている。

 「両地域の人々が分断されている現状と過去の歴史を乗り越え未来をつくろうと模索している姿は、現在の世界の状況や、西側諸国とイスラム諸国の問題ともリンクする。この小さなキプロスから何か少しでも世界中の人々が共感し、考えてもらえるきっかけとなる作品を作れないかと思った」と語る宇佐美の、新境地ともいえる作品に注目だ。

編集部

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