イタリア・ミラノで生まれたブルーノ・ムナーリ(1907〜98)は様々な肩書を持つことで知られている。
1930年代にはイタリア未来派の一員として最初期のキネティック・アートでありモビールの先駆けとなる《軽やかな機械》《役に立たない機械》を発表。
一方で、1930〜40年代にはグラフィックデザイナー、アートディレクターとして雑誌の編集にも携わる。またその頃には、幼い息子のために仕掛け絵本の企画・デザインなども手掛けた。
58年には、イタリアを訪れていた詩人・美術評論家の瀧口修造と知り合い、以後滝口を通じて作曲家・武満徹とも親交を深め、65年には日本で個展を開催。60年代以降も、しばしば日本を訪れ、日本の伝統的な美意識やデザインに共鳴し、影響を受けた。また晩年は、子供のための造形ワークショップ活動にも力を注いだムナーリ。
本展では、未来派に関わっていた時代の作品、そして晩年の絵本原画など、日本初公開の作品約150点を含めた、約320点を紹介する日本最大の回顧展となる。美術家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、教育者、研究者、絵本作家など、様々な顔を持つブルーノ・ムナーリの多彩な表現に触れることができるだろう。
なお、神奈川県立近代美術館 葉山では、久米民十郎や村井正誠らによる日本近現代の抽象画22点を展示した、コレクション展「抽象の悦び」も会期中同時に開催される。