ミルチャ・カントルが銀座メゾンエルメスで日本初個展。新作で見せるのは東京を舞台に描く「透明性」

写真や映像、彫刻、インスタレーションを通して、この世界の複雑さや不確かさを、独特の詩的な表現で浮かび上がらせるミルチャ・カントルの日本初個展が銀座メゾンエルメス フォーラムで開催される。会期は2018年4月25日〜7月22日。

ミルチャ・カントル The Landscape is changing 2003 Color film with sound 22分 Courtesy of the artist and Magazzino, Rome

 ミルチャ・カントルは1977年ルーマニア生まれのアーティスト。2005年に、真っ白なギャラリーに一対の鹿と狼を放ち、その緊張関係を観察する映像作品《Deeparture》で話題を呼び、以降も、写真や映像、彫刻、インスタレーションなど、様々なメディアで、この世界の複雑さや不確かさを、独特の詩的な表現で浮かび上がらせるような作品の発表を続けている。

 近年は、ポンピドゥー・センター(2014)やニューヨーク映像美術館(2012)で個展を開催。日本では「ヨコハマトリエンナーレ 2011」や「いちはらアート×ミックス 2014」へ参加するなど、注目を集めている。

ミルチャ・カントル Deeparture 2003 2分43秒(ループ)16mm transferred in BETA digital, color, silent Courtesy of the artist 

 日本初個展となる本展では、「あなたの存在に対する形容詞」と題し、銀座メゾンエルメスのガラスブロックの「透明性」に着想を得た、新作の映像作品とインスタレーションを発表。

ミルチャ・カントル Tracking Happiness 2009 11分 S-16mm Transferred on HDCAM Sound= Adrian Gagiu Courtesy of the artist, Magazzino, Rome and Dvir Gallery, Brussels/Tel Aviv

 人々が透明なプラカードを掲げて東京の各所を行進する映像作品は、2003年に発表したプラカードの代わりに巨大な鏡を持ち、練り歩く群衆を撮影した映像作品《The Landscape is changing》に連なる作品。「透明な主張」を掲げる人々を通して、東京の日常の中に詩的な瞬間をつくり出す。

 さらに、数十本のアルミニウムの鐘とガラスの屏風を組み合わせたインスタレーションでは、静寂と響き合う鐘の音によって、鑑賞者の目には見えない記憶や感情を呼び起こし、規則や慣習など「透明」なものの力によって、無意識に縛られる「個人の存在」に対して、問いを投げかける展示となっている。

編集部

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