芸術とデザインを越境する表現とは
──展示作品について教えていただき、ありがとうございます。続いてご自身についてもお聞きしたいです。朱さんが現在のようなお仕事をしたいと思ったのはいつ頃ですか。
朱 私は小さい頃から絵を描くのが好きで、國立臺灣藝術大學(国立台湾芸術大学)では美術を専攻し、山水画を描いていました。しかし、だんだん考えが変化して、美術家はどこまで行っても個人の仕事で、主観的すぎるのではないかと思うようになりました。そして大学院では實踐大學のデザイン学部に進学し、プロダクトと建築のデザインを修了したのです。
芸術のなかには、一般の人が見ると全然わからないものがあります。でも私は人に伝わるものがやりたかった。誰が見ても感動できるものが良い芸術だと思います。そのせいか、設計やデザイン関係の人から「あなたの作品は芸術ですね」と言われ、芸術関係者からは「これはデザインかな」と言われます。最初に勤務した設計事務所でも、社長や上司に同じようなことを言われていました。
──芸術とデザイン、2つの要素がせめぎあう揺らぎのなかに朱さんの作品の本質があるのですね。
朱 とくに建築の仕事では、実験性の強いものをやりたいと思っています。しかし施主には最初なかなか理解してもらえないことが多い。求められるのは実用性です。そこで芸術の理念や手法について説明することが、施主を納得させるのに役立っています。
──朱さんの実験的な建築が実現した、具体的な事例はありますか。
朱 2018年に台湾の高雄で手掛けた「無関実験書店」では、室内を真っ暗にして一冊一冊の本にスポットライトを当てています。普通の本屋は書棚にたくさんの書籍が並んでいますが、ここでは一冊の本とひとりの人間が向き合うのです。本と自分だけがそこに存在し、空間すらなくなってしまうような感覚を得られます。皆が当たり前と認識している常識を疑い、体験の本質をテーマにしたデザインです。


もうひとつ挙げると、2015年に開業した中国四川省・成都の複合文化施設「方所書店 成都店」。面積約5000平米、天井高約9メートルの巨大な地下空間で、玄奘三蔵法師が経典を取得した洞窟に着想を得て設計をしました。大きな書棚が幾重にもそびえ立ち、壮大で神秘的な雰囲気を放っています。この文化施設は、同年の「Architectural Digest」で「世界で最も美しい書店15選」のひとつにも選ばれました。


──ありがとうございます。最後に、今後の展望などを教えてください。
朱 日本で作品を展示するのは今回が初めてです。「神戸六甲ミーツ・アート 2026 beyond」の存在はインターネットで偶然知ったのですが、それが作品を展示する機会にまで発展して嬉しく思っています。ひとりでも多くの方に私の作品世界を体験していただければと思います。そして今後も日本で同様の機会があれば、積極的にトライしていきたいと思っています。



















