INTERVIEW / PROMOTION - 2019.12.2

「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」の役割とは何か? ディレクター、ノア・ホロヴィッツに聞く

アメリカ大陸で最大級の規模を誇るアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」が、12月5日に開幕する。そのプログラムや運営、そしてアメリカのアート市場について、ディレクターアメリカズのノア・ホロヴィッツに話を聞いた。

聞き手=編集部 

ノア・ホロヴィッツ Courtesy Art Basel

──2015年にアート・バーゼルのディレクターアメリカズに就任されてから、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(以下、ABMB)とアメリカや世界のアート市場にはどのような変化がありましたか?

 過去17年以上にわたり、ABMBは、世界各地の一流ギャラリーやアーティストと交流するための、国際的なアートコミュニティにとってもっとも重要な交流の場のひとつとなっています。

 ここ数年、我々は多くの成功を収めてきましたが、最近注目すべき出来事はマイアミ・ビーチ・コンベンション・センター(MCBB)の改築です。2018年に完成したMCBBは出展ギャラリーにさらなる可能性をもたらし、来場者にホール内でのより豊かな体験をもたらしています。

 また大規模なインスタレーションとパフォーマンスに特化した新しい分野「メリディアン」がスタートしたり、若い世代や地理的にますます多様化したギャラリーの展示が、私たちのメインセクターで次々と出現しています。このフェアが、著名なコレクターだけでなく、次世代の顧客や一般のクリエイティブ層にとっても集いの場であり、見逃せない文化イベントとなっていることは喜ばしいことですね。

 アート市場をより一般的に見ると、多様化が進んでおり、様々な背景から多様な声が寄せられています。これは歓迎すべきことであり、また非常に前向きなことで、フェアにしっかりと反映されています。アート界では、ギャラリーの再編なども見られますが、我々は中小規模のギャラリーを支えるため、新たな価格システムを取り入れるなど、様々なことに取り組んでいます。

アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ2018 © Art Basel

──フェア・ディレクターとして、あなたはコレクター、キュレーター、アーティスト、画廊経営者とつながり、アート・バーゼルの3つのフェア(バーゼル、マイアミ、香港)に新しいオーディエンスやアイデアをもたらす必要があります。フェアのディレクターとしてもっとも重要な資質はなんだと思いますか?

 アート・バーゼルのディレクターアメリカズとして、私はABMBを仕切り、アメリカのチームのリーダーを務め、またバーゼルと香港のフェアでも地域の代表を務めています。またマイアミ・ビーチでのフェアの企画と並行し、北米や南米のギャラリーやコレクター、美術館のリーダーやアーティストとの関係構築も担っています。そのために、私は南北アメリカ大陸の各地域を頻繁に訪れ、様々な市場やアートシーンの発展をよりよく理解し、ギャラリーや新しい文化施設を見つけるために、アート界の主要な関係者と交流しています。同時に、私が顧客と築いてきた関係が、バーゼルや香港のフェアへの関心を高めるのに役立つことも重要です。

──今年のアメリカではフリーズ・ロサンゼルス、オブジェクト&シングなどの新しいアートフェアが開催されました。アメリカにおけるもっとも大きく国際的なアートフェアとして、ABMBのチームはどのように新鮮さを保っているのですか?

 アート・バーゼルは質を重視します。フェアにおけるギャラリーの質、私たちのプログラムの質、フェアに参加するコレクターや団体の質などです。革新のための革新は行いませんが、フェアが私たちのギャラリーやアーティストたちに適切であり続けるようにします。

 今年のマイアミ・ビーチでは、この取り組みの結果として20の新しいギャラリーを誘致しました。ABMBは出展する半数のギャラリーがアメリカで展示スペースを持っており、アメリカの多様なアートシーンの広さや深さを探るユニークなフェアでもあります。ニューヨークやロサンゼルスにおける著名なギャラリーだけではなく、例えばシカゴやサンフランシスコ、バンクーバーなどのアーティストやギャラリーにもハイライトを当てているのです。加えて、ラテンアメリカのハイクオリティなギャラリーを紹介することも特徴のひとつですね。

 このようにアメリカに焦点を当てるいっぽう、私たちは世界中のギャラリーを紹介するグローバルなフェアでもあります。今年のフェアは、アジアから驚くほどのギャラリーが参加します。初出展としては香港の10号賛善里画廊、北京のマジシャンスペース、ジャカルタのROHプロジェクツがあり、香港のHanart TZ ギャラリーが初めてメインセクターに参加します。さらに今年は、ベルリンのソシエテ、パリのハイアート、プラハのハント・カストナーなどの若いギャラリーがフェアのメインセクターに参加するので、歓迎したいと思います。

「メリディアンズ」でリッソン・ギャラリーがローラ・プロヴォストのインスタレーション《DEEP TRAVEL Ink.》を展示する予定 © Laure Prouvost, Courtesy Lisson Gallery

 また、ABMB内の主要な新セクターとして「メリディアンズ」では、野心的で大規模な彫刻、絵画、インスタレーション、映画や映像の上映に加え、伝統的なアートフェアの境界を広げるパーフォーマンスのためのプラットフォームを提供します。メリディアンズはマガリ・アリオラによってキュレーションされ、会場は約6000平米の展示スペースであるMCBBのグランド・ボールルームです。シアスター・ゲーツの新作や、アイザック・ユリエンによるセクター最大級の9チャンネルのヴィデオインスタレーション《Lina Bo Bardi - A Marvellous Entanglement》(2019)を含む34のプロジェクトをラインナップしています。

──今年のABMBでは20のギャラリーが初参加とのことでしたが、これらのギャラリーを選ぶ基準はなんですか?

 さきほど申し上げたとおり、マイアミ・ビーチの展示者の半数がアメリカでギャラリーを持っていますが、国ごとの数制限を設けているわけではありません。つまりギャラリーは世界中の同業者と競争しなくてはならないのです。選定委員は、ギャラリーのプログラムの質や、過去に一緒に取り組んだアーティスト、展示やフェアでの質をもとにすべての参加申請を評価します。「ノヴァ」や「ポジションズ」または「サーヴェイ」などのセクターは提案ベースなので、選定委員会はギャラリーによる提案の質をもとに判断を下します。

──ABMBの来場者の日本の現代美術への反応や、近年の日本のギャラリーのパフォーマンスについてはどのように思われますか?

 私はアート・バーゼルでの日本のギャラリーの展示にいつもワクワクさせられます。今年は7年間の空白を経て、川端健太郎や児島善三郎、シーン・ランダースなどのアーティストのグループ展を展示するタカイシイがフェアに戻ってきてくれたことに喜んでいます。

 また横尾忠則や宮島達男など、日本のアーティストによる作品を紹介するSCAI THE BATHHOUSEは、とくに今年注目すべき出展者です。加えて、私にとってのもうひとつのハイライトは、「ノヴァ」セクターのNANZUKAによる、すべて森雅人の新作によって構成される展示ですね。

アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ2018 © Art Basel

──米中貿易戦争はABMBに影響を与えているのでしょうか? この状況をABMBのチームはどのように乗り越えていきますか?

 このトピックについては注視してきました。米中関係はつねに変わり続けていますし、関税の影響を予測することは不可能です。例えできたとしても、一般的なアート市場や私たちのフェアが対応するのは難しいでしょう。

──来年はアート・バーゼルの50周年に当たる節目の年です。3つのフェアで大きなアートプロジェクトがあると先月発表されましたが、来年のABMBでの新プロジェクトはなんでしょうか?

 仰る通り、アート・バーゼル50周年の節目において、3つのフェアで新たな現代アートプロジェクトを発表します。それは3月に香港で始まり、6月にはバーゼルで行われ、そして2020年12月にマイアミビーチで完結します。

 このプロジェクトは、ベルリンを拠点とするキュレーター、カスパー・ケーニッヒのアートディレクションのもと、様々な文化的背景や視点を持つ、世代を超えたチームによってキュレーションされます。

 香港は第58回ヴェネチア・ビエンナーレ2019で香港パヴィリオン担当のキュレーターだったクリスティーナ・リーが担当し、マイアミ・ビーチはロサンゼルスのLAXARTでエグゼクティブ・ディレクターを務めたハムザ・ウォーカーがディレクションします。いまはアーティストリストを最終調整している段階でこれに関する情報はこれ以上お教えできませんが、現在名前が挙げられている作家たちはとてもエキサイティングですよ。