――今回、鹿児島さんは道後温泉、銀座三越とのコラボレーションで初となる浴衣に挑戦されました。実際に取り組んでみていかがでしたか?
個人で制作する陶芸作品とは違う楽しさがあり、すごく勉強になりました。これまでアメリカ、イギリス、インド、フィンランド、スウェーデン、台湾など、世界の職人さんと一緒にプロダクトを手がけてきましたが、現地の職人さんのアレンジが入るところにコラボレーションならでは面白さがあると思っています。基本のイメージを伝えた後は、いっさい口出しせずプロフェッショナルにおまかせする。いろんな方と協働している感覚があるので、そんなスタイルが好きなんです。
――今回手がけられた4柄「くれなゐの」「柳おどり」「銀座菱」「花嵐」の中で、とくに職人の方々のアレンジを見ることのできるものはどれですか?
それぞれに特色があるのですが、自分として発見があったという点で「くれなゐの」でしょうか。「くれなゐの」の図案では様々な花を描きましたが、僕が彩色するならば、花の部分だけに色を入れていたような気がするんです。染屋さんが葉っぱ部分にもきれいな色を入れてくださっていてアレンジが美しいので、ぜひ実物をみなさんにも見ていただきたいですね。
――ゆかたには、伝統的な染色技法である「注染」が用いられているそうですね。注染とはどういった技法なのでしょうか?
注染とは反物を折りたたみ、型紙の上から染料を注ぎ込む伝統技法です。今回、染屋さんに教えていただいて初めて、注染では模様が延々と続くのではなく、折りたたむゆえに紋様が鏡合わせになる部分が出てくることがわかったんです。それをきっかけに図案をスキャンし、プリントアウトするなどのシミュレーションを通して、鏡合わせでも成立する模様を探すことにしました。振り返ってみると楽しい思い出ですが、これは大変でした(笑)。
――結果的に、注染ならではの図案になっているということですね。
そうですね。注染はカラフルな染めが可能ということで、「くれなゐの」では染屋さんの意見をきっかけに配色ラインナップも増やしました。
――「柳おどり」は、柳と戯れるタヌキの様子がなんともかわいらしいですね。なぜタヌキをモチーフに選ばれたのでしょうか?
四国や松山には、タヌキにまつわる伝説がたくさん残っているんですよね。『坊っちゃん』の校長先生も「タヌキ」ですし。それで、銀座のシンボルでもある柳と松山のタヌキを組み合わせ、柳の下でタヌキが踊っている様子をイメージしながら図案を考えました。3種のゆかたそれぞれ、古典柄へのリスペクトがあります。
――3種ともに現代的でありながら古典柄のようにも見える。年齢や性別よってもまったく違う着こなし方になりそうです。
銀座の街をイメージし、菱形の中に色々な花を描いた「銀座菱」は、華やかで洋服のようにも見えるので外国の方も似合いそうだと思います。また、「柳おどり」「銀座菱」は男女展開。当事者だからわかるのですが、30〜50代の男性が着るゆかたの柄って、意外と限られているんです。これを機にぜひ、男性にもゆかたに親しんでほしいですね。
流行が顕著な洋服は、何シーズンかで時代遅れになったり、着られなくなることも多い。でもゆかたはずっと着れますし、上から下まで全身揃ってお得だと思います。老若男女、ときにはペアでゆかたを楽しんでいただけたら嬉しいです。