陶芸家・鹿児島睦の個展が、福岡の2会場で開幕した。鹿児島は、美術大学卒業後、インテリアショップ勤務などを経て2002年より本格的に作品制作を開始。近年ではロサンジェルス、ロンドン、台湾など世界各地で個展を開催し、国内では陶器作品の入手が困難になるなど、器好きのあいだで圧倒的な人気を集める作家だ。本展は、「造形」と「図案」の二つのテーマにわけ、太宰府天満宮宝物殿、三菱地所アルティアムそれぞれで展示が行われている。
「造形」展は太宰府天満宮のシンボルでもある境内の約6000本の梅の木がテーマ。梅の木を模した陶製オブジェと、神事「曲水の宴」を表したインスタレーション空間が出現した。一方の「図案」展には、ひとつずつ図案の異なる新作88枚の器が壁一面に展示されている。開幕翌日にはライブペインティグのイベントが行われ、会場は九州内外からの観客で満員御礼となった。
鹿児島の人気に火をつけたのは、独特の世界観でつくられる図案の魅力にあるのは間違いないだろう。プロダクトや、国内外のファッションブランドとのコラボレーションも多く、「図案展」でも紹介されたグラフィカルな仕事のイメージは広く定着しつつある。しかし、今回数多く出品された陶器作品を間近で見れば、軽やかなイメージの一方で、手仕事の跡が残る質感や造形、職人のような手業もまた、鹿児島の作品世界の特徴だと気づかされる。プロダクトとアートの境界で、独自の道を歩む鹿児島の活動の本質に、多面的に迫ることができる展示になっている。
(『美術手帖』2017年3月号「INFORMATION」より)