常設展と未来の展示計画について
──展覧会は企画展がメインですか、それとも常設展となりますか?
大田 最初は常設展が中心です。常設コレクションを使ってソフトオープンを行い、様々な国の作品を展示し、多様なアートを楽しんでもらおうと考えています。
黒沢 まだ検討中ですが、完全にパーマネントな常設展というかたちにはならないかもしれません。少なくとも数年間展示するセミパーマネントな形式を採る可能性があります。その反応を見ながら、次のプログラムを調整していきます。とくにオープニングでは、常設コレクションをベースにした展示を行う予定です。また、沖縄の作家の作品を展示する専用の展示室も準備しており、その展開も今後調整しつつ進めていきます。
──今後の展示プランについてもう少し詳しく教えていただけますか?
黒沢 具体的な展示プランはこれからの検討となりますが、これまでお話してきたように、アジアや地域性、トランスナショナリティに注目しています。草間彌生さんやホー・ツーニェンさんといった、現代美術の主流で知られるアーティストはもちろんですが、ツァン・チョウチョイ(九龍皇帝/キングオブカオルーン)のように、アジアの地域性から生じた作品にも焦点を当てたいと考えています。
また、若手作家の作品にも注目しており、とくに中国をはじめとしたアジアの若手作家や、現代アートに限らず工芸作品も展示に取り入れる予定です。沖縄やほかの地域の工芸を広く紹介し、それらをどのように展示室に配置するかもこれから具体的に詰めていく予定です。
さらに、展示テーマとして「作品との再会」や「美学の再考」にも取り組みたいと考えています。混沌とした時代に突入するなかで、改めて美学を見直す必要があると感じています。ここ20年ほど、日本では美学が理論的に否定されることも多かった印象がありますが、アジアにおける新しい美学を探求し、それを展示に反映させたいと思っています。
また、「ポピュラリティ」というテーマにも注目しています。よく言われることではありますが、これまで現代美術に携わってきて、一般の人々にとってはまだ難解に感じられる部分が多く、専門性の追求という理想が結果としてあまりのハイコンテクストへと陥ってしまい、排他的になりがちだと感じています。この施設で、一般の方々や近隣にある美ら海水族館などの観光客にも楽しんでもらえるように、専門性を保ちながらも、インスタ映えのような一般の方々にも受け入れられる要素を取り入れた展示を考えています。
そのうえで、持続可能な運営をどう実現するかも重要な課題です。常設展を中心とした国内外の美術館も参考にしつつ、新しさや先進性を失わず、研究的な視点と広い視野を持ちながら進めていきたいと思っています。