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沖縄からアジアをつなぐ新たなアートセンター「PAN沖縄(仮称)」。大田秀則・黒沢聖覇が見据えるものとは?

PAN株式会社とオオタファインアーツが主導する「PAN沖縄(仮称)」プロジェクトは、沖縄を舞台にアジア全域を見据えた新たなアートセンターの設立を計画している。歴史と文化が交差する沖縄において、現代美術や工芸を通じた多様な表現の場を創り上げるこのプロジェクトについて、その中心人物である大田秀則氏(オオタファインアーツ代表)と黒沢聖覇氏(PAN沖縄準備室キュレーター/プロジェクト・マネージャー)に話を聞いた。

文・聞き手=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

「PAN沖縄(仮称)」アートセンター外観イメージ案 © KIAS

 「PAN沖縄(仮称)」(以下、PAN沖縄)プロジェクトは、PAN株式会社と東京・六本木のギャラリーであるオオタファインアーツが共同で遂行する新たなアートセンターの設立計画である。沖縄という地理的にも文化的にも特異な場所を舞台に、アジア全体を見渡す視点を持ち、現代美術や工芸を通じて多様な表現の場を提供することを目指している。

 同プロジェクトは、約2万7800平米の広大な敷地にアートセンター、ランドスケープ、カフェを設け、地域の文化や自然環境と融合した空間を創り上げる予定。プロジェクトの計画地は、沖縄北側の本部町備瀬にある大林組所有地であり、近隣には沖縄随一の観光地である国営海洋博公園や沖縄美ら海水族館などがあり、観光地とも連携が期待される。今後のスケジュールとしては、2025年夏に着工し、2027年秋の開業を予定している。

 沖縄はかつて琉球王朝の時代に中継貿易で栄え、多文化の交流が盛んに行われていた。現在では、東京やソウル、北京、上海、香港、台北などアジアの主要都市から約4時間圏内に位置しており、文化的な交差点としての役割を果たす理想的な場所とされている。このプロジェクトを通じて、沖縄の豊かな自然や文化に触れながら、アジアの現代美術の最前線にもアクセスできる環境を提供することが狙いだ。

「PAN沖縄(仮称)」ロゴ

 「PAN沖縄」という名称には複数の意味が込められている。新たな始まりや期待感を象徴する「パン」という響きのほか、「展望」を意味する「パノラマ」の接頭辞「PAN」や、アジア全域を視野に入れた「Pan-Asian Network」の頭文字などが含まれている。

 プロジェクトの設計や施工は、各分野の専門家との協力のもとで進められている。イシダアーキテクツスタジオ(KIAS)が手がけるアートセンターは、アジアの現代美術や工芸に焦点を当てた展示を行う計画であり、その延床面積は約3800平米と広大である。学術的な専門性と一般的なポピュラリティのバランスを良く取り入れ、沖縄に関連する作家や作品を紹介する専用展示室も設けられる予定だという。

 ランドスケープの設計には現地の自然環境を尊重したコンセプトが反映され、沖縄の自生植物を活かした庭園が整備される。さらに野外アート作品も設置され、自然と人工物の入り組んだ境界を感じさせるダイナミックな空間が広がる。

 カフェでは、沖縄の地元食材を中心にしたビーガン料理が提供される予定。デザインやメニューも沖縄やアジアの食文化を反映した内容となり、地域とのつながりを意識した運営が計画されている。さらに、アーティスト・イン・レジデンスプログラム、体験型観光施設、宿泊施設の誘致など大林組の隣接所有地の開発事業も構想されており、沖縄独自の文化や自然を広く発信していくことが期待されている。

 このような背景を踏まえ、プロジェクトを主導する大田秀則氏(オオタファインアーツ代表)と黒沢聖覇氏(PAN沖縄準備室キュレーター/プロジェクト・マネージャー)に、PAN沖縄という構想の背景や今後の展望についてインタビューを行った。

編集部

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