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沖縄からアジアをつなぐ新たなアートセンター「PAN沖縄(仮称)」。大田秀則・黒沢聖覇が見据えるものとは?【2/5ページ】

「PAN沖縄」の構想とその背景

──「PAN沖縄」プロジェクトの構想は、どのように生まれたのでしょうか?

大田秀則(以下、大田) 画廊の仕事をしていると、よく作品を人に勧める機会がありますが、私の世代ではとくにアジアの美術を勧めても馴染みがなく、受け入れられにくいことが多かったです。欧米の美術が好まれる傾向が強く、アジア美術の理解は難しかったですね。そこで、私は自分でアジアの作品を集め始めました。

 その過程で、香港やタイなどのコレクターやアートラバーとの交流が生まれ、次第にアジア全体をひとつの地域としてとらえる発想が芽生えました。国ごとに分けるのではなく、国境を越えたつながりを考えたわけです。また、これまで多くの方にお世話になってきたので、その恩返しという意味合いもありました。そして、香港やシンガポール、韓国、バンコクなどで出会った人々とともに、アジアをつなぐ中心的な拠点をつくりたいという思いも強くなりました。この構想は4年ほど前から具体的に考え始めたものです。

──黒沢さんは、草間彌生美術館金沢21世紀美術館でも学芸員として勤められていましたが、現在はどのように「PAN沖縄」プロジェクトに関わっているのでしょうか?

黒沢聖覇(以下、黒沢) 現在、新会社であるPANがオオタファインアーツの支援のもと準備室を設置し、この施設の開業準備を進めています。私はキュレーターとして、展覧会企画だけでなく、施設全体の計画や運営にも関わっています。

──なぜ沖縄を選ばれたのですか?

大田 沖縄はご存知の通り、中国と日本のあいだに位置し、長い歴史のなかで独自の文化を保ってきた地域です。その背景や、琉球王朝時代の豊かな貿易の歴史は非常に魅力的に映ります。このような場所に身を置き、その歴史を学びたいという気持ちがありました。また、東京にいるとどうしても日本や東京を中心に物事を考えがちなので、私はもっと国境を超えた個人同士のつながりを大切にしたいと考えています。

「PAN沖縄(仮称)」アートセンター外観イメージ案 © KIAS

──「PAN沖縄」はアートセンター、ランドスケープ、カフェの3つで構成されていますが、来館者にはどのような体験を提供したいとお考えですか?

大田 都会のビルにある美術館とは異なり、来館者には海風を感じながら、庭で自然とともにアートを楽しんでほしいです。人の手によってつくられたものと自然が共存する環境でのアート鑑賞は非常に重要だと考えています。ただ、海の近くにあるため、環境面での課題も多いので慎重に計画を進めています。

黒沢 例えば潮風で作品がすぐに錆びる問題など、保存の観点からも慎重に検討しています。また、ランドスケープについても、できる限り自然の地形をそのまま活かし、人工的な造成は行わない方針です。現在、設計者と相談しながら、生態系を尊重しつつ、来館者が楽しめるプランを進めています。整えられたイギリス庭園のようなスタイルではなく、現地の岩や自然を活かしたランドスケープを目指しています。

──美術館の建築やランドスケープデザインの注目ポイントについて教えてください。

黒沢 建築面では、ホワイトキューブ型の展示室を採用していますが、私たちは作品との距離感や親近感を大切にしたいと考えています。巨大なミュージアムのような広大な空間ではなく、来館者が作品に近づける設計を目指しています。また、平屋建てにすることで、環境や災害にも対応しやすい設計にしています。

 ランドスケープについても、現地の地形を活かした設計を重視し、生態系コンサルティングも行う科学者や若手造園家など、多くの専門家と協力しながらダイナミックな散策路を計画しています。中国庭園の考え方も参考にしつつ、沖縄やアジアのダイナミズムを感じさせるような庭を目指しています。

編集部

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