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エルミタージュ美術館で中国人初となる個展を開催した張洹の眼は、中露の歴史をどうとらえたのか?

上海とニューヨークを拠点に活動する中国の現代アーティスト、張洹(ジャン・ホァン)。1965年、文化大革命前夜の中国に生まれ、激動の中国現代史とともに生きてきた彼は2020年9月、エルミタージュ美術館で中国人初となる個展『灰の中の歴史』を開催した。インタビューでは展覧会テーマを通して、張氏の歴史観や作品へ託す思いを紐解いていく。

聞き手・文=沓名美和

1:June 15, 1964 2008-2012 Incense ash on linen 286×3740×5cm

灰から生み出す歴史への問いかけ

──ロシアのエルミタージュ美術館で中国人初の個展を開催された張さんですが、発表された新作の多くはロシア史や中露関係の歴史をモチーフに選ばれていますよね。展覧会開催の経緯と、創作にあたって考えられたことについてお聞かせください。

 2018年末に、エルミタージュ美術館の現代美術部門ディレクターのDimitri Ozerkov氏が上海の私のアトリエを訪れ、そこで展覧会開催のオファーを受けました。彼は1998年に私がニューヨークで初めて開いた展覧会をきっかけに、私の創作活動に注目していたそうです。

 今回、エルミタージュ美術館は世界5大博物館のなかで初めて、中国現代アーティストの個展を行ったことになります。この展覧会の開催は、私個人にとってももちろん特別な思いがありましたが、もっとも特別で重要な点は中露関係においてです。中国とロシアの関係は、中国と他の国との関係とは非常に異なります。

 歴史に照らしてみると、中国とロシアは兄弟ともいえる関係です。とくにここ100年、中国の社会、政治、経済、文化、芸術等様々な分野において著名なプロジェクトの多くはロシアの影響と切り離しては考えられません。例えば、天安門広場の建築計画もそのひとつです。

 つまり、中国の現代社会や文化はロシアからの学び抜きには成立しないというわけです。私はこの両国の関係を、どのような表現で作品に落とし込むかに焦点をあてて創作していきました。

Hermitage Buddha 2019 Copper and steel 1280×711×639cm

──展覧会では寺院の香炉に残った灰を使って描かれた歴史画が出展されていますが、素材に灰を用いたのはなぜですか?

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