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起点は「刀剣乱舞ONLINE 」。10万人の「推し活」が日本のミュージアムを救うインフラになる?【2/3ページ】

「配りたくても配れない」──思わぬ現場の壁

 潤沢な資金が集まったいっぽうで、刀研機構は意外な壁に直面していた。第1回の助成募集での、応募数が想定を下回ったのだ。採択数の上限10件に対し、応募は6件、採択は3件に留まった。「資金があっても、現場の学芸員がそれを受け取る余力を奪われている。これがいまの日本のミュージアム界の現実です」と橋本は苦渋の色を浮かべる。

 半田もその構造的な課題を指摘する。「国立館でも地方公立館でも、資金は公的資金ですべて賄うという固定概念からなかなか抜け出せない。また学芸員にも『博物館は儲ける場所ではない』という意識が根強い。こうした意識が外部資金の調達をネガティブなものとしてとらえる一因なのではないでしょうか。それは、組織を俯瞰するマネジメント感覚の欠如につながっている面もあります」。

 かつて永青文庫で副館長を務めた経験をもつ橋本も、現場が直面する現実に理解を示す。「まず刀剣をテーマとする学芸員そのものが少ないこと、初年度のため告知が行き届いていなかったことは事実です。いっぽうで研究が『業務』なのか『個人活動』なのかの、線引きが難しい。休日に研究すればいいのか、あるいは残業扱いになるのかという規定をめぐって、事務方や上司の理解が得られず、学芸員が応募を断念することもある。なかには執筆や講演に対する数万円の謝礼すら、『個人で受け取るのではなく、館に入れて事業費の足しにする』ほど逼迫した館も。結果、外部資金の獲得経験を積むことができず、書類が書けない、制度が噛み合わないという状況が、応募へのハードルとなっているのです」。

 この「噛み合わせの悪さ」を解消するため、刀研機構は柔軟な改善策を検討している。応募者の所属館の事務負担を補填する「間接経費」の付与や、汎用性の高い機材購入にも助成を活用できるスキームだ。橋本はその狙いとして、「間接経費を支給することで事務方の負担を減らし、応募を館全体で支援する体制がつくれます。また購入機材で記録したデータは、文化遺産アーカイヴなどに登録してもらうことにすれば、助成事業を超える範囲へも成果を還元できる。こうした現場の困難な実情に寄り添った支援こそが求められています」と語る。

編集部