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増えるアート側からの支援。KAWSやダミアン・ハーストも

新型コロナウイルスの影響で世界各国の文化セクターが大きな影響を受けるなか、アート側からの支援も続々と始まりだしている。海外の事例を中心にまとめた。

ダミアン・ハーストが発表したチャリティのための作品

営利・非営利の垣根を超えて 

 拡大し続ける新型コロナウイルスの影響で、世界各国の文化セクターが大きな影響を受け、ドイツやフランス、アメリカなど各国政府が独自の支援策を展開するなか、アート側からの支援の動きも活発になっている。

 文化機関としては、J・ポール・ゲティ美術館やゲティ研究所、ゲティ保存修復研究所などを運営するアメリカ・ロサンゼルスのゲティ財団が、地元の非営利施設・団体を支援するために、1000万ドル(約10億8000万円)の救済基金「LA Arts COVID-19 Relief Fund」を創設することを発表。基金はロサンゼルスにある慈善団体「California Community Foundation」(CCF)によって運用され、地元芸術団体に2万5000ドル〜20万ドルの助成金を提供する予定となっている。

ゲティ・センター  (C) 2017 J. Paul Getty Trust
ゲティ研究所 Photo by Scott Frances/Esto (C) 2003 J. Paul Getty Trust

 オークションハウスのフィリップスは、ニューヨークの慈善団体「ロビン・フッド財団」と協力し、チャリティのためのオンラインオークションを5月に実施。このオークションでは、国際的なギャラリーや個人コレクターから作品を募り、その収益全額をニューヨークの非営利団体に寄付するという。

 同じく大規模な組織としては、香港やロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークなどにスペースを持つメガギャラリー「ハウザー&ワース」の例が挙げられる。同社は「#artforbetter」として、自社のオンラインプラットフォームによる収益の10パーセントを世界保健機関(WHO)の「新型コロナウイルス連帯対応基金」(COVID-19 Solidarity Response Fund)に寄付することを明らかにしており、その額は数十万ドル(約数千万円)におよぶことが予想されている。

左から、イワン・ワース、マヌエラ・ワース、マーク・パイヨ Courtesty of Hauser & Wirth

アーティストも連帯

 アーティストもこうしたチャリティの動きを見せ始めている。

 ニューヨークでは、コロナ禍にあるエルムハースト病院救済のため、96人以上の写真家たちが「Pictures For Elmhurst」を行った。このキャンペーンでは、各作家が1枚150ドル(エディションは無制限)で作品を販売。その全収益を、コロナ対応に追われるエルムハースト病院のために寄付する。収益は138万ドル(約1.5億円)に達し、エルムハースト病院は「このプロジェクトで多くの命が救われ、スタッフはサポートされるだろう」とのコメントを寄せている。

「Pictures For Elmhurst」より、トーマス・デマンド《Study (Waterlillies)》
「Pictures For Elmhurst」より

 また、ヴォルフガング・ティルマンスやアンドレアス・グルスキーら40人以上のアーティストは、「2020Solidarity 」をスタートさせている。これは、アーティストがそれぞれ1枚ずつポスターをデザインし、寄付を必要としている団体に無料で配布することで、クラウドファンディングやその他のキャンペーンの謝礼として使用することができるという仕組みだ。

キャプション

 個人では、KAWSやダミアン・ハースト、村上隆といった著名アーティストが動き始めた。

 KAWSは自身のInstagramで複数回のチャリティーセールを4月11日からスタートさせた。1枚1200ドルのサイン入りプリント作品を各回25枚出品し、その収益を毎回異なる慈善団体や病院に寄付。すでにセールは5回行われている。

 ダミアン・ハーストも、同じくInstagramを通じて新作を発表。医療従事者に感謝を捧げる作品として、 《Butterfly Rainbow》を無料ダウンロードできるようにしたほか、今後プリント作品を通じて、寄付を行うことを明らかにしている。

ダミアン・ハースト Butterfly Rainbow

 村上隆はファッションブランド「Supreme」とコラボレーションし、同ブランドのボックスロゴTシャツにオリジナルデザインを提供。その収益は、新型コロナウイルスによって大きな影響を受けている若者やホームレス支援のために慈善団体「HELP USA」に全額寄付される。

SupremeのInstagramより

 行政による文化セクターへの経済的支援が遅れを取っている日本でも、文化側からの寄付の動きが見られる。

 GINZA SIXにある現代美術ギャラリー「THE CLUB」は、救済基金「COVID 19 Relief Fund」を立ち上げた。この基金では、猪瀬直哉やコア・ポア、ジャッキー・サコッチオなど7人のアーティストが制作した作品の販売収益を、新型コロナウイルス感染症への医療援助活動などを行う「国境なき医師団」(MSF)に寄付。販売は4月21日からスタートし、即日完売した。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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 同ギャラリーのマネージングディレクター・山下有佳子は、今回のプロジェクトを通じて「アートには人の心を動かし、さらにはそれをまとめあげる力がある」と感じたと話す。「利他の心、Altruism。『忘己利他』ではなく、己のためにこそ、人類は利他主義となるべきだと我々は考えます。アートによる利他、つまり社会貢献という意識が日本の社会に更に深く根付いてほしいと願ってTHE CLUBは今後も活動を続けていきます」。

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