EXHIBITIONS

アペルト16

AKI INOMATA:Acting Shells

AKI INOMATA 貨幣の記憶 © AKI INOMATA Courtesy of Maho Kubota Gallery

AKI INOMATA 貨幣の記憶 © AKI INOMATA Courtesy of Maho Kubota Gallery, Seimei Tanaka, Hirota Site Museum

AKI INOMATA やどかりに「やど」をわたしてみる © Nantes Metropole - Nantes Art Museum -Photograph: C. Clos

AKI INOMATA 進化への考察 #1:菊石(アンモナイト) © AKI INOMATA Courtesy of Maho Kubota Gallery

 金沢21世紀美術館が若手作家を中心に取り上げる展覧会シリーズ「アペルト」の今回は、AKI INOMATAの個展「Acting Shells」を開催する。

 INOMATAは1983年生まれ。2008年に東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻を修了し、17年にアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)の助成を得てニューヨークに滞在。人間と生き物との関係に着目し、動物とともに制作した作品を多く手がけ、生き物との関わりから生まれるもの、あるいはその関係性を提示してきた。ニューヨーク近代美術館での展示や作品収蔵、ミラノ・トリエンナーレやタイランド・ビエンナーレといった国際展に参加するなど、目覚ましい活躍を見せている。

 本展「Acting Shells」は、INOMATAによる進行中のプロジェクト「貨幣の記憶」を中心に構成。2015年より開始されたこのプロジェクトは、真珠貝の中に現代世界の各国の通貨のシンボルとなる肖像を融合させることで、「貨幣の化石」をつくり出す試みだ。

 人類は、古代から貝殻を重要な貨幣のひとつとして用いてきた。仮想通貨や電子マネーが席けんし、物理的な貨幣と置き換わろうとしている今日、「貨幣の記憶」プロジェクトは、あえて貨幣の歴史をさかのぼることで、過去と現在を横断し、私たちを取り巻く経済・社会システムを新たに見つめ直す機会を鑑賞者に与える。

 いっぽう、貝殻(シェル)は本来、貝の身を守るシェルターや「やど」の役割を果たしている。本展はまた、ヤドカリやアサリなど、私たちと異なる生物種にとっての「シェル」の意義を多角的にとらえ、人間社会や生命の進化史と、生き物の能動的な振る舞い(act)との結びつきを考える。

 会場では、世界各地の都市を透明の樹脂で模った「やど」を、ヤドカリに渡して住んでもらうINOMATAの代表作《やどかりに「やど」をわたしてみる》も展示。本作でINOMATAは、ヤドカリの背負う透明の都市に、人種や国籍、性別や外見だけで他人を判断しがちな私たちや人間社会を重ね合わせている。今回は、金沢市のアクアリウムショップの協力を得ながら、市民とともにヤドカリの成長を約5ヶ月間にわたり見守る。