EXHIBITIONS

佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在

佐藤雅晴 東京尾行 2015-2016

佐藤雅晴 I touch Dream #1 1999

佐藤雅晴 SM 2015

佐藤雅晴 バインド・ドライブ 2010-2011

佐藤雅晴 福島尾行 2018

佐藤雅晴 ガイコツ(「死神先生」シリーズより) 2018

  2019年に惜しまれつつも逝去したアーティスト、佐藤雅晴。その展覧会「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」が水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催される。

 佐藤は1973年大分県生まれ。99年に東京藝術大学大学院修士課程修了後に渡独し、国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーに在籍。ドイツに10年間滞在したのち、2010年日本に帰国。茨城県取手市を拠点に構えて直後に上顎癌が発覚し、以後、闘病生活を送りながら制作に励んだ。19年、同地にて逝去。

 佐藤は、ビデオカメラやスチルカメラで自らが撮影した日常の風景をパソコン上でペンツールを用い、なぞるようにトレースしてアニメーション化する、「ロトスコープ」と呼ばれる技術によって映像作品を制作していた。現実と非現実が交錯する独自の世界観は、現代美術、映画、アニメ、メディア・アートの表現領域を越え、国内外で高い評価を得ている。

 生前、佐藤はトレースという行為について、描く対象を「自分の中に取り込む」ことだと語っていた。それは、自身の暮らす土地や目の前の光景への理解を深め、関係を結ぶ行為ととらえることもできる。いっぽう、佐藤の作品を見る私たちは、実写とのわずかな差異から生じる違和感や、現実と非現実を行き来するような知覚のゆらぎを覚える。人それぞれに多様な感情や感覚を呼び起こす佐藤の作品は、見ることの奥深さと豊かさを与えてくれるものと言えるだろう。

 本展では、1999年の渡独後に初めて制作した映像作品《I touch Dream #1》から、死の直前まで描き続けた「死神先生」シリーズまで、映像作品26点、平面作品36点の計62点を通じ、佐藤の画業を振り返る。